■同じ星でも地域で異なる話
星空には、ロマンと不思議が溢(あふ)れている。人類誕生前から輝き続ける星々に、人々は畏敬の念とともに想像力を膨らませ、さまざまな伝説を語り継いできた。星の伝説といえば、ギリシャ神話を思い浮かべてしまうが、実は世界中にあり、アジアにも多くの神話が生まれていたことを、本著のおかげで知った。
美しく楽しい挿絵が盛り込まれた本著には、「アジアの星プロジェクト」による、東アジアと東南アジア、太平洋諸島の国と地域から集められた、68の神話・伝説が収録されている。
同じ星や星座でも、地域によって、全く異なる伝説となっている。例えば、北斗七星。モンゴルでは、巨大な鳥に連れ去られた王女を助けるために、それぞれの能力を発揮する8人の息子たちの話(1人は北極星になる)。韓国では、親友のために自分の命を分け与えた男の話で、死を司(つかさど)る修行僧が北斗七星。日本のアイヌ伝説では、熊と戦ったカムイが天に昇り北斗七星となった。タイでは、欲深い金持ちが成仏できずに鰐(わに)になり、妻の行いのおかげで、天の七つ星になったという伝説。