■「西」が栄える前から中心地
日本の歴史は「西」から発展したと一般に考えられています。その既存概念を打ち砕いてくれるのが本書です。「西」が栄える以前から、今の関東=「東」が日本の中心地であったと力説しています。
その根拠として田中英道先生がまず着目したのは富士山の存在。古来、山や自然を信仰してきた日本人にとって最も重要で神聖な富士山。その山が見える場所こそ国の中心地と推測しています。
さらに建国の歴史にまつわる神話と、考古学的発見や日本人の風俗が符合する部分にも注目。例えば「国譲りの神話」。天照大神(あまてらすおおみかみ)が大国主命(おおくにぬしのみこと)に迫り、話し合いで国を譲らせました。このとき高天原(たかまがはら)から出雲に派遣された2神が茨城の鹿島神宮、千葉の香取神宮に祀(まつ)られていることから、高天原はこの付近にあったと考えられます。従来の歴史家にはない大胆な発想と視点で、読む人を引き込みます。
天照大神の孫神一行が九州へ移り、その4代目の子孫(神武天皇)が瀬戸内、熊野経由で大和を征服、初代天皇として即位したのは周知の通り。