漫画家として道筋が見えてきた7年後、中退したつもりでいた大学が、実は休学中であることを知って驚いた。「両親の配慮で私には内緒にしていたようです。長いスランプから抜け出た後に知ったのですが、その時期に聞いていたら大学に戻っていたかもしれません」
昭和55年に小学館漫画賞を受け、受賞パーティーに義一さんも出席した。「漫画界の重鎮、手塚治虫さん、石ノ森章太郎さんもいらして、父は喜んでくれたようでした」
竹宮さんには忘れられない父の姿がある。20歳、いよいよ東京へ旅立つ日、徳島駅まで送ってくれた父から求められた握手。「照れくさかったけれど、独り立ちしていく私へのリスペクトを感じました」。そのぬくもりに支えられて今の自分がある。(横山由紀子)