しかし、とMさんは語る。
「高齢者講習で実車教習が行われるのは評価できるのですが、問題は運転免許を取る時に受ける“実地試験”とは異なり、受けた人は運転ミスをしても修了証が貰え、免許の更新ができてしまうこと。要は甘いんです。クルマは凶器になり得るもので、その危険を防ぐために免許取得の試験に合格する必要があるわけですよね。高齢者講習でも同等の“試験”を行なうべきです」
また、75歳以上の講習予備検査(認知機能検査)は3年に1度。認知症はもっと短い期間で発症・進行することがあるので、検査ペースとして100%正しいとは言えない、とMさん。
「そんなことを考えなければならないほど、認知症ドライバーの危うさは早急に対策を講じなければならない切実な問題になっているのです」
警察庁の統計によれば、2015年末の70歳以上の運転免許保有者数は約775万人。厚労省の65歳以上の7人に1人が認知症患者というデータに当てはめれば、100万人以上の認知症ドライバーがいることになります。
高齢でもクルマを運転しているのは元気な方でしょうし、年間30万人近い免許自主返納者もいるので、その補正はしなければなりませんが、それでもかなりの数の認知症ドライバーがいるのが現在の日本。Mさんのように、それを想定するという自己防衛はもちろん、対応策を考える時期にあることは確かなようです。
(ライター 相沢光一=文)(PRESIDENT Online)