「自主返納者の多くは、今の自分と向き合い、衰えを感じる部分があれば謙虚に受け入れることができる人、そしてクルマの便利さや楽しさだけでなく、その一方にある事故のリスクも考え、どちらをとるべきか冷静に判断できる人だと思うんです」(Mさん)
つまり……、周囲が今すぐにも免許を返納してもらいたいと思っている肝心の認知症ドライバーは、ほとんど含まれていないのではないか、とMさんは言うのです。
「私が見てきた認知症の疑いがあるドライバーは例外なく自分を客観視できず“オレは大丈夫だ”と思い込んでいました。また、プライドが高く、弱みを見せられない、人の指図は受けないという意識が強い。だから、何の逡巡もなくクルマの運転を続けるわけです」(Mさん)
そうした高齢ドライバーがいる家族が抱える、不安。これはかなり切実なものです。
何せ、クルマで出かけると帰ってくるまで、どこかで事故を起こしているのではないかと心配のし通しです。言うまでもなく自動車事故は命を落とす危険がありますし、人身事故でも起こせば犯罪者になってしまう。
そんなことになれば、一家は崩壊です。
自動車保険 認知症は「保険金が全額出ない可能性」
また、取り調べで認知症が判明すると、家族が監督責任を問われることがありますし、被害者に対する負い目や賠償の問題が重くのしかかることになります。頼みの綱の自動車保険も認知症が判明すると保険金が全額出ない可能性があるそうです。