驚いた事例を一つ。大手の販売店で料金見積もりを頼んだ。上限容量5ギガバイトで月7000円程度と提示された料金プランの通信容量を「上限1ギガバイト」へとグレードダウンした場合を聞くと、提示された金額は月額8000円を超えた。このからくりを聞くと、通常のプランに適用している割り引きが、1ギガバイトでは適用外になるからだという。いまだに上限1ギガバイトの通信容量が選択できない大手もある。
各種の値引きは次々となくなり、期待された低料金プランも出てこない。これを嫌気した利用者が機種変更や追加購入を見合わせ、需要が後退するのでは…という懸念も出ている。しかしここで見逃せないのは大手事業者にとっては、この流れは必ずしも悪い話ではないということだ。
特に3社は何千万件もの契約を抱えているので、販売件数の伸び率が多少下振れしても、客単価が増えれば大きくもうかる。3社間の競争は落ち着き、新規参入の格安スマホ業者の競争力は限定的。実際に今4~6月期決算では3社とも携帯事業は増収増益で好調だった。
つまり、スマホの通信料金を引き下げるという当初の目的は完全に見失われ、消費者だけが損をするという構図になった。安倍首相が消費者のためにと行った値下げ指示が、逆効果になってしまった。これでいいはずはない。関係者は首相の本意をくんで軌道修正をしなければならない。
(SankeiBiz編集長・高原秀己)