日産自動車と三菱自動車は25日、資本業務提携の正式契約を結んだと発表した。日産は年内に三菱自の筆頭株主となり、燃費データ不正問題からの再生を主導する。一方、三菱自は同日、平成28年3月期連結決算を修正し、燃費データを改竄した軽自動車4車種のユーザー補償費用として特別損失191億円を計上した。今後も補償などで損失が膨らむ公算が大きい。
特別損失は、ガソリン代の差額とエコカー減税に関する追加負担の肩代わり分を見込んだ。対象台数は計約62万500台で、単純計算すると1台当たりの平均費用は約3万円となる。
併せて三菱自は日産出身の山下光彦氏を開発担当の副社長に充てる人事も内定した。三菱自の益子修会長は同日、東京都内で記者団に対し、「(不正の)全容解明と再発防止に全力で取り組む」と述べた。
日産は8月までに資産査定を終え、10月ごろに三菱自の第三者割当増資を引き受ける。約2370億円を投じて三菱自株34%を取得し、会長ら取締役4人を派遣する予定だ。連携して再生に向けスタートを切るが課題は山積している。
この日、計上した特別損失には、「生産停止による下請け企業などへの補償は入っていない」(広報部)という。生産停止が長引けば補償は拡大する。また、国が進めている独自の燃費測定の結果次第では、補償額が増える恐れもある。
こうした未確定の費用は資産査定にも影響する。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は家電大手シャープに対し、将来債務になる恐れのある「偶発債務」を理由に出資額を見直した。日産幹部は「結果次第で出資額の見直しはあり得る」と語る。
提携後に不祥事が再発すれば日産にも大きな打撃になる、との懸念も根強い。