今も語りぐさになっている富士フイルムの「本業消失の危機」。写真のデジタル化の進展でフィルムの需要が急減したことを指す。会社の存亡を懸けて進めた事業構造転換の一翼を米国で担った経験がある。
平成14年に米子会社の最高財務責任者として赴任し、M&A(企業の合併・買収)で手腕を発揮した。複数の印刷関連企業を買収し、グループの中に融合させて効率的に機能させるように心を砕いた。「日米の考え方の違いやそれぞれの成り立ちがあり、非常に苦労した」と振り返る。
社長としての仕事も、M&Aが焦点となる。東芝メディカルシステムズ争奪戦ではキヤノンに敗れたが、他の企業買収で医療事業などの拡大を目指す方向だからだ。「新事業の強化・育成のために必要な手段は積極的に進める」と強調。M&Aやその後の融合で、座右の銘に掲げる「大事は大胆に、小事は細心に」を実践する日も近そうだ。
古森重隆会長は「明快な頭脳を持つ敏腕な人物。当社をさらなる成長に導くのにふさわしい」と評する。構造転換を指揮した古森氏のイメージが今も強烈な中、社長として存在感を示せるか、注目される。(高橋寛次)