しかし、この時すでに液晶パネルの市況は急速に悪化しており、わずか2カ月後に経営危機は表面化する。通期の連結業績予想を下方修正し、最終損益見通しを従来の300億円の黒字から300億円の赤字に引き下げたのだ。
高橋社長は平時なら、一般の社員から親しまれ、平穏に任期をまっとうできたかもしれない。しかし、経営環境の悪化がそれを許さず、日本的な「調整型」の手腕は最後まで、発揮されそうにない。
2日の会見で郭会長は、「シャープにリーダーシップを提供したい」と述べ、現経営陣にそれが欠けているという認識を示唆した。高橋社長の去就は明らかにされなかったが、その“決断”も、すでに親会社となった鴻海の郭会長に委ねられていることは明白だ。(高橋寛次)