この時、高橋社長は事実上、決定権を失っていたようだ。社長ら生え抜きの取締役は機構案を支持していたとみられるが、鴻海案に傾いた金融機関出身者や社外取締役を説得できなかった。
社外取締役の中には、シャープに出資したファンドの出身者2人が、優先株をめぐり「決議に参加できない特別利害関係人にあたる」と顧問弁護士が指摘していた。本来、自分と反対意見の社外取締役がこのような状況にあれば、会社のトップとして決議への参加を見送らせることもできるはず。取締役会議長の水嶋会長も同じだが、結局、2人は決議に参加し続けた。
シャープの取締役会は2月25日に鴻海の傘下に入ることを全会一致で決定。最後まで、高橋社長がリーダーシップを発揮することはなかった。
26年12月、東京支社。役員と記者の懇親会で、高橋社長は、自ら国内外の事業所をまわり、いかに一般の社員と交流を深めているかを得意げに語っていた。