今後も部品コストが下がらなければ競争力に影響を与える恐れもあり、社内では「好業績のなかでトヨタ伝統の徹底した倹約意識が薄れてはいないか」と危ぶむ声も出ている。将来的に為替相場が円高に反転すれば、足元の円安効果がはげ落ち、ベアや原価改善努力の緩みによる収益構造の悪化が大きな打撃となりかねない。
独フォルクスワーゲンなどのライバル企業と世界販売首位を争うトヨタにとって、利益還元の大盤振る舞いで「稼ぐ力」を毀損(きそん)すれば、それはそのまま負の遺産となる。成長を維持しつつ、社会的責任にどう応えるのか。好業績の影で、抜きんでた強さ故の課題がトヨタを悩ませている。(田辺裕晶)