経営の立て直しのため脱テレビ依存に舵を切った船井電機は25年1月、別分野のブランド力の向上による収益拡大を狙って蘭フィリップスのオーディオ機器事業を買い取ることで合意した。
ところが同10月、フィリップスが「船井側に契約違反があった」と売却を中止、賠償を求める仲裁を国際商業会議所(ICC、パリ)に申し立てる事態となった。
ブランド力の向上による収益改善策が頓挫し、逆にトラブルに巻き込まれるなか、船井電機が1月に経営の若返りと業績回復の期待を込め、社長に抜擢したのが上村氏だった。
だが、経営再建を託された上村氏に立ちはだかったのは、創業者の船井会長その人だった。「船井電機では創業者に話を通さないと何も決まらない」(業界関係者)といい、上村氏にとっても、低価格路線のビジネスモデルを打ち立てて一代で「世界のフナイ」に育て上げたカリスマの意向が壁になったとみられる。