こうした若い世代と接する中で、宮本は「今の日本には『服育』が必要だ」と考えている。「着物の時代のころから、日本には手入れをしながらいいものを長く着る習慣がある。ワンシーズン着れば捨ててしまうような衣服と、上質でも何年も着る衣服にかけるお金は、どちらが本当に高いのか」。
宮本が後進育成の道を選んだ根底には、身にまとうものを慈しむ文化を絶やしたくないとの思いがある。
着物向けの織物から転向し、世界のデザイナーたちを魅了する服地づくりに取り組んできた宮本は一貫して、既存の枠を超える「新しい発想」に挑戦してきた。
「コピーすることが伝統じゃない。革新の連続こそが伝統になる」。研究所に足を運んでくる後継者たちに、こう伝え続けようと宮本は決めている。=敬称略(滝川麻衣子)