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スコットランド独立住民投票 勢いづく賛成派 反対派は声潜め

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スコットランド独立住民投票 勢いづく賛成派 反対派は声潜め

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英スコットランドのポンド紙幣を手にする男性。スコットランドでは、イングランドとは異なるデザインの独自のポンド紙幣が流通している。しかも、各銀行が別々のデザインを採用している=2014年9月6日(内藤泰朗撮影)  英国からの独立の是非を問う住民投票を18日に控えたスコットランドでは、独立を求める意見が急速に勢いづいていた。住民たちが独立に傾斜し始めたのはなぜか。「運命の日」が近づいたスコットランドの主要3都市を駆け足でめぐり、その答えを探した。

 「革命が起こる」

 「一生に一度のチャンスがやっと到来した」

 スコットランドの最大都市グラスゴー中心部。独立派の事務所を訪れると、女性運動員のリズさん(75)が興奮気味に語った。独立運動に30年以上携わってきたという。

 スコットランドは、水産業などの伝統的な産業に加え、再生可能エネルギーや石油に恵まれた豊かな場所だ。独立すれば税金をロンドンに送る必要はなく、北欧のような手厚い社会保障や福祉が整った非核国家をつくることができる。リズさんは、そうした主張が浸透して独立派支持が急伸したと理由を説明した。

 英国に残留したまま理想を追求することはできないのか。そう尋ねると、「彼ら(イングランド)はその歴史で、一度も私たち(スコットランド)を平等に扱ったことはない。独立するのは当然のことだ」と首を振った。

 「革命的なことが起こるわ」。そう語るリズさんの声には、イングランドへの怨念すら感じられた。

 油田で福祉国家

 1707年に、イングランドとの長年の対立の末に連合王国を形成したスコットランドは、大英帝国の発展とともに経済成長を遂げた。しかし、1979年に誕生したサッチャー政権は国営企業の民営化を断行。造船、鉄鋼など重厚長大産業は壊滅し、街には失業者があふれて社会主義的な政策を求める声が高まった。以来、スコットランドでは教育費や医療費は地元政府が全額負担している。

 独自の政策が実施できる資金源になっているのが、70年代にスコットランド沖で発見された北海油田だ。独立派はその油田の完全な所有権を主張し、さらなる福祉国家建設に邁進(まいしん)しようというのだ。

 そうした考えに反対する人々もいる。油田開発の基地がある港街アバディーンで、スコットランド地方議会のジョンストン議員(53)は「私は愛国者だが、民族主義者にはくみしない。お金だけで真の福祉国家はできない。人々を誤った方向に誘導するのは危険だ」と警告した。

 「僕は出てゆく」

 どの街でも、独立反対派を捜すのには苦労した。「資金力も組織力もない」(反対派運動員)という問題に加え、独立派の民族主義者たちからの報復を恐れ、堂々と声を上げられない「静かな有権者」がかなりいるからだという。

 スコットランドの中心都市エディンバラ中心部で、戸別訪問してビラを手渡す反対派の運動を取材した。中には、運動員が本当に反対派かどうかを確認したうえで本音を語る人もいた。

 「(行政府の)サモンド首相は、独立が“前向きなビジョンだ”と訴えるが、先行きが不透明な賭け事にしか過ぎない。同じ英国人を、『彼ら』と呼び敵愾心(てきがいしん)をあおる民族主義者が勝つのなら、私たち家族はここを離れる覚悟だ」

 ビラ配りに参加した銀行員の男性(44)は別れ際、こう語った。(エディンバラ 内藤泰朗/SANKEI EXPRESS

 ■スコットランド 英国本島の北部に位置し、イングランド、ウェールズ、北アイルランドとともに「大ブリテンおよび北アイルランド連合王国」を構成。1707年にイングランドと統合するまでは独立国だった。面積は北海道よりやや小さく、人口は英国総人口の8%超に当たる約530万人。主な都市はエディンバラとグラスゴー。1999年、ブレア英政権の地方分権改革で約300年ぶりに議会が設置され、外交や軍事、財政・金融などを除く幅広い分野で立法権が認められた。議会の多数党が内閣を組織し、地方行政府を運営する。独立派は非核国家を目指しており、英国内ではスコットランドにある英海軍原潜基地の行方にも懸案が高まっている。

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