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Yes?No?「連合王国」の危機/スコットランド独立住民投票 世界が注視

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Yes?No?「連合王国」の危機/スコットランド独立住民投票 世界が注視

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英スコットランド・主要都市。英連合王国はイングランド、スコットランド、ウェールズから成るグレートブリテンと北アイルランドで構成。スコットランドは1707年にイングランドと合併したが、スコットランド出身のトニー・ブレア政権時代の1997年に国民投票が行われ、議会が復活し、独立運動が活発化した。  英北部スコットランドの独立の是非を問う住民投票が3日後の18日に迫った。世論調査では、独立賛成派が終盤で追い上げて反対派にほぼ並んで拮抗(きっこう)、予断を許さない情勢が続いている。300年以上続いたスコットランドとイングランドの「連合王国」が終わりを告げるのか。住民投票の結果が持つ意味、影響力は大きく、欧州だけでなく世界の分離独立勢力などが、その行方を注視している。

 18日に即日開票

 住民投票はスコットランド在住の16歳以上の男女を有権者として実施される。質問は「スコットランドは独立国家になるべきか」の1問だけで、「賛成」か「反対」かの二者択一で答える。最低投票率は設けられず、即日開票で賛成票が過半数となれば独立が決定し、英政府との協議で諸制度の設定を詰めて約1年半後に独立する。

 13日に発表された最新の世論調査では、独立賛成が46%、反対が54%(態度未定を除く)で、反対が上回った。英紙が13日伝えた別の調査では賛成49%、反対51%で、全体として賛否が拮抗した状態が続いている。

 スコットランドの独立が現実味を帯び始めたのは今月7日、英世論調査会社ユーガブの調査で、1カ月前には20ポイント以上の差で劣勢だった独立賛成派が、わずか2ポイントだが初めて反対派をリードしてからだ。

 スコットランド行政府のアレックス・サモンド首相(59)ら独立賛成派が描く「北欧のような高福祉国家の実現」という未来像が、広く共感を集めたとみられている。

 事態の急展開を受けてデービッド・キャメロン英首相(47)ら与野党党首もスコットランド入りし、徴税権の譲渡も含めた「最大限の自治」を約束するなど、「連合王国」への残留に向けて説得を行った。英財界も、英大手銀行が独立したら本拠地をスコットランドからロンドンに移すと公表するなど、経済の混乱を示唆している。

 英政権に不満

 独立賛成派の不満の背景には、北海油田という国家の富の源泉を地域に有しながら、国政に住民の声が反映されていないという不満がある。人口が英国全体の8%に過ぎないスコットランドは、英下院に送り込める国会議員は定数の10分の1以下にとどまる。原油収入は英政府に吸い上げられ、一部しか地元には回ってこない。しかも、スコットランドは伝統的に労働党支持者が多いが、現在英国では保守党政権が続き、不満を増進させている。

 スコットランドの独立機運に触発され、英南西部ウェールズの民族主義者たちが「いずれは英国からの独立を」と語り始めたほか、世界の分離独立派も勢いづいている。スペイン北東部のカタルーニャ自治州は11月に独立を問う住民投票を実施する意向だ。スペイン北部バスク自治州などでも、独立への動きが再び活発化する可能性がある。

 こうしたマイクロナショナリズムとも呼ばれる分離独立の動きは、一見矛盾するようだが、欧州連合(EU)による統合の動きと表裏一体をなしている。大きな国に属するのは安全保障や経済活動の規模が主な理由だったが、戦争の脅威が下がり、EUという大きな市場に入ってしまえば、小さな国でも十分やっていけるからだ。

 だが、スコットランドはすんなりEUに入れるかは不透明であり、北海油田もあと数十年で枯渇する。明治時代に「蛍の光」など多数の民謡が小学校唱歌として“輸入”され、日本にも馴染みが深いスコットランドの「国家百年の計」が問われている。(SANKEI EXPRESS

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