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朝日新聞 報道の誤り認め撤回 木村社長 辞任を示唆

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朝日新聞 報道の誤り認め撤回 木村社長 辞任を示唆

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「吉田調書」報道に関する記者会見で、質問に答える朝日新聞社の木村伊量(ただかず)社長=2014年9月11日午後、東京都中央区築地(川口良介撮影)  朝日新聞は11日夜、東京都中央区の東京本社で記者会見し、東京電力福島第1原発所長として事故対応にあたった吉田昌郎(まさお)氏=昨年7月、58歳で死去=が政府事故調査・検証委員会の聞き取りに答えた「聴取結果書」(吉田調書)に関し、「所長命令に違反、原発撤退」と報じた記事の誤りを認め、撤回するとともに謝罪した。さらに、「慰安婦」問題についても訂正の遅れを謝罪し、おわびした。

 木村伊量(ただかず)社長は自らの進退について、「編集部門の抜本的改革のおおよその道筋をつけた上で、速やかに進退について判断する」と辞任を示唆した。

 誤りの原因について、木村社長は「調書を読み解く過程で評価を誤った。表現を取り消すとともに、読者のみなさまとともに、東電のみなさまに深くおわび申し上げます」と述べ、報道部門の最高責任者である杉浦信之取締役編集担当の職を解くことを明らかにした。

 朝日新聞は吉田調書を入手したとして5月20日付朝刊で、「東日本大震災から4日後の2011年3月15日朝に、第1原発の所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ離れた福島第2原発へ撤退した」と断じた。そのうえで、「東電はこの命令違反による現場離脱を3年以上伏せてきた」「葬られた命令違反」と東電の対応を批判していた。

 この報道を受け、海外メディアが朝日新聞の記事を引用し、「恥ずべき物語」「セウォル号事故と同一」などと一斉に報じた。しかし、吉田調書を入手した産経新聞が8月18付で「命令違反の撤退なし」と報道。政府は11日夕に非公表だった吉田氏の聴取結果書をホームページで公表した。

 ≪「痛恨の極み」「深くおわび」≫

 「読者および東京電力の皆さまに深くおわびを申し上げます」。朝日新聞の木村伊量(ただかず)社長はカメラのフラッシュが一斉にたかれる中、「吉田調書」報道を全面的に誤報と認め、深々と頭を下げた。

 11日午後7時半から東京・築地の朝日新聞東京本社で開かれた記者会見には、100人を超す報道関係者が詰めかけた。

 原発作業員たちを“敵前逃亡”した「恥ずべき物語」としておとしめた朝日報道。木村社長は「調書を読み込む過程で評価を誤り、多くの東電社員が逃げ出したかのような印象を与える間違った記事だと判断した」と淡々と語った。

 木村社長は「誤った内容の報道となったことは痛恨の極み」と述べ、自身の責任については「読者の信頼を大きく傷つけた記事だと重く受け止めており、私が先頭に立って編集部門を中心とする抜本改革など、再生に向けて道筋をつけた上で進退について決断する」と辞任を示唆した。原因については「現時点では記者の思い込みや記事のチェック不足」とした。

 ≪憤る福島フィフティーズ 「意図的に正反対のこと書かれた」≫

 「正反対のことを意図的に書かれた」。福島第1原発の吉田昌郎(まさお)元所長の遺族は、朝日新聞の報道に涙を流したという。事故後、吉田元所長と最後まで現場に残り、海外メディアから称賛された「福島50(フィフティーズ)」の一人も「命令に違反して逃げるわけがない」と憤った。

 「普通の人が逃げるところに俺たちは行ったんだよ? そんな連中が吉田昌郎所長の命令に違反して逃げるわけがない。朝日新聞の報道は当初から誤報だと思って黙殺していた」

 福島第1原発の収束作業に従事し続けた東電協力会社の30代社員は、吉田調書の公開を受けて振り返る。

 2号機圧力抑制室の圧力がゼロになった後も原発に残った作業員約50人を海外メディアが「福島50」と報道。その後収束に入った作業員もいつしか含まれるようになった。男性はその一人だ。

 2011年3月11日の震災当日、原発近くの建設現場にいた。1号機が水素爆発した翌12日、上司から「危ないらしい」と連絡を受けて関東地方の自宅に一旦帰ったが、13日、その上司が「とにかく行ってくれ」と原発に戻るよう要請。妻と2人の幼い子供を残し、北に向かった。

 「やんなきゃ、やんなきゃ、としか考えていなかった」。がれきをかきわけながら、外部電源を原発につなぐための分電盤を運んだ。1時間の作業だけで、被曝(ひばく)線量は8ミリシーベルトを超えていた。

 無名でも、爆発が止められればいいと思ってきた。ただ、今年5月、朝日新聞が「所長命令に違反」と報じたときは、東電社員のなかにも悔しがる人がいたという。

 「吉田さんは本当にいい人だった。朝日新聞がどう報じようが訂正しようが、俺たちの功績も変わらない」。男性はいまも原発を離れることなく、除染作業の指揮に汗を流している。(SANKEI EXPRESS

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