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「EUは一体」新世代がリード 次期外交安保代表に41歳の伊女性外相

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「EUは一体」新世代がリード 次期外交安保代表に41歳の伊女性外相

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 欧州連合(EU)の臨時首脳会議は8月30日、次期外交安全保障上級代表にイタリアのフェデリカ・モゲリーニ外相(41)を指名した。11月に就任する(任期5年)。これでEUの「外相」である上級代表は、現職のキャサリン・アシュトン氏(58)=元英枢密院議長=に続き2代続けて女性が務めることになったが、注目されているのは、その若さだ。欧州では、国家の枠を超えた一体感の強い「エラスムス世代」と呼ばれる層が各界のリーダーとして育ちつつあるが、モゲリーニ氏はその代表格である。「新世代指導者」として欧州や世界を取り巻く難局を切り開くことが期待されている。

 東欧諸国反発も…説得

 モゲリーニ氏の上級代表指名は、EUのヘルマン・ファンロンパイ大統領(66)=元ベルギー首相=が短文投稿サイトのツイッターで、次期EU大統領にポーランドのドナルド・トゥスク首相(57)を選出したことと合わせて発表した。モゲリーニ氏の登用はイタリアのマッテオ・レンツィ首相(39)が強く推したものだが、7月に候補として名前が浮上した際には、経験不足に加えてウクライナへの介入を強めるロシアにイタリアが「伝統的に甘い」ことから、反露感情の強い東欧のEU加盟諸国から猛反対された。しかし、ファンロンパイ氏や政治姿勢(中道左派)の近さからモゲリーニ氏を評価するフランソワ・オランド仏大統領(60)らが説得して加盟28カ国の合意を取り付け、指名にこぎつけた。

 国境超えエラスムス教育

 モゲリーニ氏は1973年6月、ローマ生まれ。父は映画監督のフラビオ・モゲリーニ氏(1922~94年)で、ローマ大学で政治学を学んだ後、左派政党の青年組織の活動に参加し、2007年に発足した民主党で指導部に入った。08年の下院選で初当選し、今年2月、レンツィ政権で外相に就任した。2人の娘の母親でもある。

 上級代表指名を受けて、モゲリーニ氏はブリュッセルのEU本部で「私たちは(欧州統合という)夢を実現させた。この夢を悪夢に転じさせないよう注視していかなくてはならない」などと語った。欧州の一体感を身をもって経験したエラスムス世代らしい発言だった。

 エラスムス世代とは、「愚神礼讃」などで知られるルネサンス期の人文主義者、エラスムス(1466頃~1536年)をもじったエラスムス計画に由来する。1987年に始まったこの計画は、国をまたいだ複数の大学が相互に単位を認定し合うことで、若い人たちのEU内での交流を促し、国境を超えた地域連携やEUの経済力強化と加盟国間の統合促進を図るのが目的だ。当初は3000人程度しか参加者はいなかったが、現在では100万人以上の学生が参加し、4000以上の大学で学んでいる。そして、エラスムス世代とは主に30代後半から40代後半を指す。

 「経験は誰にも負けない」

 モゲリーニ氏もローマ大学の学生時代、エラスムス計画でフランスに留学した経験を持ち、英語、フランス語、スペイン語が堪能だ。エラスムス世代の一般的特徴は、(1)欧州市民という意識が強い(2)多言語に堪能である(3)ツイッターやフェイスブックなどを駆使する(4)はっきり物を言う-などが挙げられる。

 モゲリーニ氏の「後見人」で自身もエラスムス世代に属するレンツィ伊首相は「時代は今や進取の精神に富むエラスムス世代が引っ張る時だ」と公言。モゲリーニ氏も「私はG7の国の外相。私のどこが経験不足なの。経験は誰にも負けない」と強気の発言をしている。(SANKEI EXPRESS

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