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安倍首相、中南米との協力深化 政策スピーチ 5大陸制覇「地球儀外交」に手応え

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安倍首相、中南米との協力深化 政策スピーチ 5大陸制覇「地球儀外交」に手応え

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ブラジル・首都ブラジリア、サンパウロ  ブラジル訪問中の安倍晋三首相は8月2日昼(日本時間3日未明)、サンパウロ市内で中南米に関する政策スピーチを行い、経済発展、国際世論形成、人材交流の3点を柱に中南米諸国との協力の深化を訴える。

 首相はまず経済発展に関し、アベノミクスの「第3の矢」である成長戦略について「日本の深いところに目掛け撃ち続けている」と述べ、農業や医療、女性政策などで改革姿勢を強調。人材育成に重点を置く日本企業の積極的な進出を通じて、中南米経済との関係強化を訴える。

 続いて国際世論形成に関して「日本と中南米には価値と志に共通性がある」とし、自由や民主主義、法の支配などの重要性を指摘。日本の「積極的平和主義」の活動を紹介した上で、海洋進出を強める中国を念頭に「世界から不幸、危険、法の蹂躙(じゅうりん)を少しでもなくしていこう」と呼び掛ける。

 最後に「中南米の若いリーダーとの絆を強めるために交流事業を拡充したい」として、人材交流の重要性に言及。リオデジャネイロ、東京と五輪開催が続くことを踏まえ、中南米でスポーツ普及事業を進める方針も表明する。

 ≪5大陸制覇「地球儀外交」に手応え≫

 安倍晋三首相は8月2日夜(日本時間3日朝)、中南米5カ国歴訪の全日程を終え、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」は5大陸制覇を達成する。その締めくくりとなる中南米政策スピーチでは「3つの協調」という理念を掲げたが、背景には拉致問題に関する日朝協議など日本の独自外交に理解を得る狙いもあった。首相は中南米で“日本応援団”の増加に手応えを感じているようで、2周目となる「地球儀外交」での次の一手に注目が集まる。

 「日本応援団」着々と

 「アイルトン・セナがホンダのエンジンで疾駆した姿は、今も記憶に鮮やかだ」

 首相は中南米政策スピーチで、地元サンパウロ出身のF1ドライバーで20年前に事故死したセナを取り上げる。セナが日本の自動車メーカーであるホンダとの強力なタッグで世界を席巻したことをモチーフに、日本と中南米の深い関係を強調する狙いがある。

 首相が歴訪した中南米以外の国際情勢をみれば、日本の立ち位置は微妙な場所にある。ウクライナ情勢をめぐるロシアへの追加制裁は北方領土問題の行方も考慮しなければならない。核・ミサイル開発を行う北朝鮮との拉致問題の交渉は米国などの理解を得ながら慎重に進める必要がある。

 こうした際に国際社会で日本の力強い応援団となり得るのが中南米諸国だ。これらの国々は日本固有の問題に直接の利害関係があまりなく、協力を得やすい。今回の歴訪でも首相が各国首脳に拉致問題をめぐる日朝協議について説明し、支持を得ている。

 歴史的に中南米諸国は日本への理解者でもある。明治時代にいち早く日本と平等条約を結んだのも、戦後に日本の国連加盟にそろって賛成したのも中南米諸国だった。今回の歴訪ではカリブ諸国が日本の捕鯨に賛意を示している。

 発言力アップ期待

 約30カ国の中南米諸国は国連でも一定の勢力を誇る。常任理事国拡大をめぐっては中南米諸国の中にもメキシコなど慎重な国があるが、他の多くの分野では日本の発言力アップの強い味方になってくれることが期待される。

 ただ、首相の掲げる「地球儀外交」は、今回の中南米歴訪で「久しぶりに日本の首相が訪問して歓迎される段階は終わった」(同行筋)ともいえる。今後は日本の国益をより緻密に考えた戦略的な「地球儀外交」が求められるといえそうだ。(サンパウロ 是永桂一/SANKEI EXPRESS

 ≪首相車列、玉突き事故≫

 ブラジル訪問中の安倍晋三首相に車列で同行していた外務省幹部ら日本人スタッフの車3台が8月1日夜(日本時間2日朝)、サンパウロ市内で玉突き事故を起こした。12人が首などに軽傷を負ったが、首相や昭恵夫人が乗った車は事故に巻き込まれず、首相らにけがはなかった。2日以降の日程に変更はない。

 外務省によると、首相らの車列がサンパウロの空港から宿泊先のホテルに向かうため高速道路を走行中、事故が発生。前の車が急ブレーキをかけ、次々に追突したという。(サンパウロ 是永桂一/SANKEI EXPRESS

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