SankeiBiz for mobile

【ブラジルW杯】22歳の10番対決 新たなる英雄 バッタも祝福

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSのスポーツ

【ブラジルW杯】22歳の10番対決 新たなる英雄 バッタも祝福

更新

【ブラジルW杯】決勝トーナメント_準決勝進出4チーム。※ボスニアはボスニア・ヘルツェゴビナ。FIFA(国際サッカー連盟)の順位は最新ランキング。日時は日本時間=2014年7月  ブラジル国旗は、アウリヴェルデ(金と緑の旗)と呼ばれる。緑はブラジルを象徴するカラーだ。

 サッカー・ワールドカップ(W杯)準々決勝のブラジル戦でPKを決めたコロンビアの若き英雄、ハメス・ロドリゲス(22)の右腕に巻かれたキャプテンマークをよくみてほしい。

 そこに、緑のバッタがとまっている。さすがはブラジリアン・サイズ。巨大なバッタだ。自らのスルーパスで得たPKを冷静に決めた直後に、バッタはゴール方向から飛んできて、ハメスの右腕にとまった。

 今大会得点王レースで単独トップを走る6ゴール目。ブラジルカラーのバッタはこれを祝福する、大会からの使者のようだった。

 22歳の10番は、隣のネイマールと同じ。大会前の評価はネイマールが大きく先行していたが、日本戦を含むグループリーグからの好プレーの連続で2人は同じステージに立ち、ハメスはついに、大会を代表するスーパースターに育った。そしてこの試合で涙とともに去った。

 王国ブラジルはこの試合で容赦なくハメスに襲いかかり、パウリーニョとフェルナンジーニョのダブルボランチが挟み込んで彼に自由を与えなかった。それでも後半に見せ場を作ってPKも決めたのはさすがだが、試合終了のホイッスルとともにピッチに腰を落とし、泣いた。

 彼に駆け寄り抱きしめ、ユニホームを交換し、6万人の大観衆にハメスに対する拍手を要求したのはブラジルのDFダビドルイスだった。「お前はすごい」。そう話していたのだという。

 この試合でハメスが受けた反則は両チーム最多の6つ。米大リーグでは、主砲に与えた危険球の報復は自軍の主砲が狙われる。だからというわけではないが、試合終盤、ネイマールが後方から襲われ、脊椎を骨折し、こちらも大会から去った。

 ネイマールに真っ先に駆け寄ったのも、ハメスだった。得点王を争っていた2人の22歳の10番が大会を去った。寂しくはあるが、大会はこれからクライマックスを迎える。

 2人の不在を忘れさせるような活躍を、アルゼンチンの10番は見せてくれるだろうか。ネイマールのアイドルでもあったメッシなら、きっとやってくれそうでもある。

 ≪コロンビア 新時代の寵児に熱狂≫

 失意の涙でブラジルを去ったコロンビアの新星、ハメス・ロドリゲスだが、母国の首都ボゴタで目にしたのは、歓迎の熱狂だった。

 空港に降り立ったイレブンは消防隊の放水のアーチに迎えられた。オープン仕様のバスの前後左右を警官隊が十重二十重に囲み、その外側には数え切れないほどの人々。凱旋(がいせん)祝勝会場に到着すると、そこは見渡す限りの人、人、人。そして旗、旗。ハメスのポスター、歓喜、歓呼、歓声。南米の情熱を一カ所に集めたようなお祭り騒ぎだった。

 大観衆にコメントを求められたハメスは「いつも一緒にいてくれてありがとう。愛してます」とはにかみながら語りかけ、故障でW杯出場を断念したチームの大エース、ファルカオのユニホームを掲げた。さらに、ゴール後のパフォーマンスと同じダンスまで披露してみせた。

 熱狂も無理はない。コロンビアは「エスコバルの悲劇」から20年を迎えていた。1994年米国W杯。バルデラマら好選手をそろえ、優勝候補の呼び声も高かったコロンビアはグループリーグの米国戦でDFエスコバルがオウンゴールを与え、大会を去る。母国へ帰ったエスコバルは酒場で12発の弾丸を浴び、射殺された。

 コロンビアはコカイン供給とマフィアが跋扈(ばっこ)する暗黒社会として恐怖の対象となり、代表チームの人気選手が麻薬カルテルの抗争に関与したこともあった。

 長く続いた暗黒時代に決別する復活、復興を代表したのがファルカオだったとすれば、未来への希望の象徴がハメスであるのかもしれない。2人がブラジルのピッチで共存していれば、どれほどの破壊力を秘めていただろう。

 背中の10番の上には「JAMES」とある。英語読みならジェームスだが、ジャパンをハポンと読むごとく、スペイン語でJの発音はハ行となり、ローマ字読みで「ハメス」となる。

 昨夏(2013年)にポルト(ポルトガル)から4500万ユーロ(約63億円)でモナコ(フランス)に加わったばかりだが、自身が希望するレアルマドリードが額を上乗せして引き抜きを画策しているとされる。マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)が6500ポンド(約114億円)を用意したとの報道もある。ハメスの前途に、国民も夢を託しているのだろう。(EX編集長/撮影:AP、ロイター/SANKEI EXPRESS

ランキング