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【集団的自衛権】行使容認を閣議決定 「万全の備え」が抑止力に

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【集団的自衛権】行使容認を閣議決定 「万全の備え」が抑止力に

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 政府は7月1日の臨時閣議で、従来の憲法解釈を変更して限定的に集団的自衛権の行使を容認することを決定した。安倍晋三首相(59)は閣議後に記者会見し、「万全の備えをすること自体が、日本に戦争を仕掛けようとするたくらみをくじく大きな力を持つ」と語り、日本に対する攻撃の抑止力を高める効果を強調した。集団的自衛権の行使を否定してきた戦後日本の安全保障政策は大きく転換されることになった。

 「外国防衛目的ない」

 首相は会見で「戦争に巻き込まれるおそれは一層なくなっていく」と述べ、今回の決定の意義を強調。「憲法が許すのはわが国の存立を全うし国民を守るための自衛の措置だけだ。外国の防衛自体を目的とする武力行使は今後も行わない」と断言した。また、新たに打ち出した武力行使の3要件について「明確な歯止めとなっている」と説明した。

 閣議決定は、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」が発生し、国の存立や国民の権利が「根底から覆される明白な危険」がある場合、必要最小限度の武力を行使することは「自衛のための措置として憲法上許容される」とした。他国に対する武力攻撃でもわが国の存立を脅かし得るとも指摘した。

 また、国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊が離れた場所の他国部隊や国連職員を助ける「駆け付け警護」を可能とするため、武器使用基準を緩和する方向性を盛り込んだ。横畠裕介(よこばたけ・ゆうすけ)内閣法制局長官は「憲法9条との整合性に配慮し、憲法解釈として可能な範囲内のものになっている」と述べた。

 首相は、今秋の臨時国会で自衛隊法など関連法の改正を進めるため、政府内に特別チームを立ち上げる考えを表明した。

 新たな脅威直面

 「わが国を取り巻く安全保障環境の変化」

 閣議決定文の随所に出てくる文言だ。政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」のあいさつで毎回のように安倍首相が言及していた文言でもある。政府筋は「この言葉に憲法解釈変更に踏み切った意味が込められている」と指摘する。

 閣議決定文に「グローバルなパワーバランスの変化」という間接的な表現で示された中国の急速な軍備拡張に伴う東シナ海や南シナ海での緊張の高まりのほか、深刻度を増す核兵器や弾道ミサイルの拡散、テロやサイバー攻撃といった新しい脅威にわが国は直面している。これまでは米軍が圧倒的な力を持ち、日本はその傘の下で守られていたが、米国は内向き志向になっている。「日本は逃げ口上として集団的自衛権の制約を使ってきたが、もはやそうした態度は許されない」(政府筋)というわけだ。

 抑止力にこだわっていた首相は周辺にこう語っていた。「いま集団的自衛権をやっておけば日本は今後50年安全だ」(SANKEI EXPRESS

 【閣議決定のポイント】

・わが国と密接な関係にある他国への武力攻撃で国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合、必要最小限度の実力行使は憲法上許容

・国際法上は集団的自衛権が根拠となる場合がある

・安全保障環境が根本的に変容し、他国に対する武力攻撃でもわが国の存立を脅かし得る

・グレーゾーン事態への自衛隊出動の手続き迅速化。戦闘現場以外の後方支援は他国の武力行使と一体化せず、実施

・あらゆる事態に切れ目ない対応を可能とする法案を作成

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