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女性の活躍推進や企業統治を強化 新成長戦略の骨子案提示

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女性の活躍推進や企業統治を強化 新成長戦略の骨子案提示

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産業競争力会議であいさつする安倍晋三(しんぞう)首相=2014年6月10日午後、首相官邸(共同)  政府は6月10日、産業競争力会議を開き、27日の閣議決定を目指す新成長戦略の骨子案を示した。日本企業の「稼ぐ力(収益力)」を強化し「成長の果実を国民の暮らしに反映させる」と表明。女性の活躍推進や企業の収益性や生産性を高める企業統治強化に積極的に取り組む方針を掲げた。政府与党間での調整が続く、農業や雇用、法人税の改革については、骨子案では具体策の明記は見送った。

 安倍晋三首相(59)は会議で「日本経済が一変するとのメッセージを強力に打ち出していくためにも骨太な政策に絞り込んでまとめてほしい」と指示した。

 骨子案では、新たに講じるべき政策を産業振興、市場の創造、国際展開の3分野に分けて具体的に挙げた。

 産業振興では、企業統治を強化するため、独立した社外取締役の設置など上場企業向けの規則「コーポレートガバナンス・コード」の制定を求める。女性の活躍推進のため学童保育の拡充のほか、税制や社会保障制度の見直しも明記した。また、「世界で一番企業が活動しやすい国」を目指すため、地域を絞って大胆な規制緩和を行う国家戦略特区の活用を盛り込んだ。エネルギーコストが企業活動を制約しないように、安全が確認された原子力発電所の再稼働も必要とした。

 市場の創造では、「中長期的な成長を実現するための課題に挑戦する」として、保険診療と保険外の自由診療を併用する「混合診療」を大幅に拡大する。国際展開では、対日直接投資の倍増や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)などの経済連携交渉の推進を掲げた。

 甘利明(あまり・あきら)経済再生担当相(64)はこれに先立つ記者会見で、法人税減税をめぐる野田毅(たけし)・自民党税制調査会長(72)との協議を「今週中に決着したい」と述べた。来年度から税率を引き下げることでは一致しており、どの程度の水準まで減税するかなど未決着の課題についても、経済財政運営の指針「骨太方針」に盛り込む表現を週内に確定させる。

 政府の規制改革会議は13日に答申をまとめ、安倍首相に提出する。政府は16日にも答申を反映した新たな成長戦略の素案を示す。法人税改革の方向性を示す骨太方針は13日にも素案をまとめる。いずれも与党との調整を経て、27日にも閣議決定する見通しだ。

 ≪雇用・農業は先送り 「岩盤規制」突破できるか≫

 政府が6月10日示した新成長戦略の骨子案では、目玉となる農業や雇用分野の改革は具体策の明記が見送られた。農業は規制改革会議と自民党の主張に隔たりがあり、雇用では新しい働き方の対象をめぐって、厚生労働省と産業競争力会議の意見が対立しているためだ。ただ、両分野の改革には市場の期待も強く、27日の閣議決定に向けて政府がどこまで抜本的な改革に踏み込めるかが焦点になる。

 政府は衰退する農業の成長産業化を目指しており、安倍首相は「(農協、農業生産法人、農業委員会の)3点の改革をセットで断行する」と強い意欲をみせている。政府の規制改革会議は5月に全国農業協同組合中央会(JA全中)を頂点とする中央会制度の「廃止」を柱とする改革案を提言した。

 これに対し、自民党が10日了承した農業改革案は農業生産法人への出資規制の緩和などは容認したが、JA全中の組織改革は「自律的な新たな制度に移行する」として、規制改革会議の「廃止」からやや表現を後退させた。農林族議員を味方に付けたJAが猛烈に巻き返した結果だが、安倍政権には改革に消極的な農協への不信感が根強い。

 新成長戦略には規制改革会議が13日にまとめる答申を反映させるが、自民党案よりも厳しい内容となる可能性がある。

 一方、雇用分野は、労働時間規制を適用しない「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入をめぐり、対象となる労働者を高度専門職に限定したい厚労省と、管理職候補まで拡大したい産業競争力会議の間で調整が続いている。

 首相は改革への抵抗が根強い「岩盤規制」に突破口を開くことに強い決意を示してきた。その象徴ともいえる農業、雇用分野の改革が中途半端に終われば、株高を支えてきた市場の失望を招き、政権の経済政策「アベノミクス」は根底から揺らぎかねない。(SANKEI EXPRESS

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