SankeiBiz for mobile

4月消費者物価3.2%上昇 23年ぶり高水準 家計負担ずっしり 国内景気に冷水

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの経済

4月消費者物価3.2%上昇 23年ぶり高水準 家計負担ずっしり 国内景気に冷水

更新

4月の全国消費者物価指数の動き(前年同月比、生鮮食品を除く、2013年5月~2014年5月)=2014年5月30日、総務省発表  総務省が5月30日発表した4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、2010年=100)は、前年同月比3.2%上昇の103.0と11カ月連続で上昇した。上昇幅は1991年2月以来23年2カ月ぶりの大きさとなり、バブル経済崩壊以降で最大だった。エネルギー価格の上昇に、4月に消費税率が8%に引き上げられた影響が加わった。

 日銀が試算する増税による押し上げ効果(1.7%程度)を除いても、1.5%程度の上昇となり、3月(1.3%上昇)より拡大した。

 増税で日用品や食料、サービスの価格が幅広く上がった。電気代などのエネルギー、家電などの耐久消費財、外国パック旅行などの上昇幅が大きかった。物価が上昇した品目数は469と3月の278から大幅に増えた。

 一方、増税分が価格転嫁されたため、家計の負担増が浮き彫りになっている。総務省が30日発表した4月の2人以上世帯の家計調査は、1世帯当たりの消費支出は30万2141円で、物価変動を除いた実質で4.6%減となった。東日本大震災が起きた2011年3月(8.2%減)以来の落ち込みで、下落幅は消費税を導入した1989年4月の0.8%減、消費税率が3%から5%に上がった97年4月の前回増税時の1.0%減をいずれも大きく上回った。同時に発表した5月の東京都区部の消費者物価指数(中旬速報値、生鮮食品を除く)は2.8%上昇し、13カ月連続のプラスだった。

 ≪家計負担ずっしり 国内景気に冷水≫

 増税分以上に値上がり

 5月30日に発表された4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、消費税増税の影響を除いても前年同月比1.5%のプラスと、「脱デフレ」に向け物価の上昇基調が続いていることが確認された。ただ4月の生産や消費は増税に伴う駆け込みの反動減が大きかった。物価だけが急激に上昇すれば、国内景気に冷水を浴びせかねない。

 駆け込み需要の反動で価格競争の激化が予想された家電。だが、蓋を開けてみれば4月の消費者物価は電気炊飯器が前年同月比12.6%プラスになるなど、軒並み増税分以上に値上がりした。

 都内の大手家電量販店の販売担当者は、景気回復を背景に「高機能な商品を求める顧客が多く、それほど価格は下げていない」と説明する。3月の駆け込み需要で在庫が少なくなり、無理に安値販売をしていないことも背景にあるようだ。

 食料品などの一部で個人消費が底堅いことも、物価が下がりにくい要因だ。アサヒビールは、プレミアムウイスキー「竹鶴」の売り上げが好調で、森英樹マーケティング第2部長は「増税後も前年同期比10%以上伸びている」と話す。4月のウイスキーの消費者物価は2.9%上昇(3月はマイナス1.6%)と、プラスに転じた。

 生産、消費は落ち込む

 しかし、増税後も物価の上昇基調が続く一方、4月の生産や消費は大きく落ち込んだ。

 経済産業省が30日発表した4月の鉱工業生産指数は前月比2.5%低下した。また、総務省が発表した4月の家計調査によれば、1世帯当たりの消費支出は実質で前年同月比4.6%減と大幅に減少した。

 日銀は脱デフレに向け2%の物価上昇を目標とするが、黒田東彦(はるひこ)総裁は(5月)21日の会見で「日本経済がバランスよく成長し、雇用・賃金などの増加を伴うことが望ましい」と、強調した。先行する物価上昇に対し、経済成長や賃上げの遅れが懸念されるからだ。

 実際、日銀は先月(4月)公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で2014年度の物価見通しを据え置く一方、輸出の伸び悩みなどを反映し経済成長率は下方修正した。また、4月の家計調査によると、勤労者世帯の実収入は物価の影響を除いた実質で前年同月比7.1%減と賃金上昇が物価に追いついていない。

 物価だけが上昇すれば、生産・所得・支出の好循環に支障をきたしかねない。いかに経済成長や一段の賃金上昇につなげられるかが脱デフレに向けた課題だ。(SANKEI EXPRESS

ランキング