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ソニー崖っぷち 成長戦略見えず

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ソニー崖っぷち 成長戦略見えず

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「構造改革をやりきる」との宣言とともに、2014年度の経営方針を発表するソニーの平井一夫社長=2014年5月22日午後、東京都港区(宮崎瑞穂撮影)  ソニーの平井一夫社長兼最高経営責任者(CEO)は5月22日の経営方針説明会で、2016年3月期の連結営業利益は4000億円規模(14年3月期は264億円)を目指す考えを明らかにした。15年3月期は不振のエレクトロニクス(電機)部門でコスト削減などの構造改革に専念。娯楽(映画・音楽)や金融で収益を下支えする。だが、電機部門は中韓勢との競争なども激しく再建は未知数。新たな成長戦略も見えないままで、復活の道のりは険しい。

 構造改革やりきる

 「異例かもしれないが、やるべきことをやらないと中長期の戦略を描けない。成長のために(電機の)構造改革をやりきる」

 平井社長は具体的な数値目標や達成に向けた施策を提示できなかった経営方針説明会でこう理解を求めた。

 12年の就任時に掲げた電機部門の再建やテレビ事業黒字化など目標は軒並み未達。「環境変化への対応とスピードが不足し、打ち手が遅れた」ためだ。

 これで打ち止めという構造改革はパソコン事業の撤退やテレビ事業の分社化まで踏み込み、高コスト体質になっている本社や販売部門にも手をつけた。

 ただ、そうした改革だけで電機部門が黒字に戻るかは予断を許さない。

 テレビは1600万台(14年3月期は1350万台)の販売を見込むが、力を入れる「4K」テレビは価格下落が加速。「プレイステーション4」が好調なゲームも、米マイクロソフトが値下げで対抗するなど取り巻く環境は厳しい。

 娯楽、金融も本業

 一方で、平井社長は「娯楽、金融もソニーにとって本業だ」と強調。16年3月期以降、電機は「売り上げを拡大するより収益を追う」と述べた。

 期待するのが、市場拡大が見込めるインターネットを使ったビジネスだ。スマホやテレビなどへの音楽・映画配信、ゲームの課金など、グループに電機や音楽・映画部門を持つ強みを生かす。ただ、現在の売り上げ規模は2000億円程度で、「成長エンジン」に育つには時間がかかる。

 市場では構造改革に「踏み込みが足りない」(証券アナリスト)との声は少なくない。今回の経営方針説明会に関係者には「サプライズがないのがサプライズ」と厳しい見方もある。

 ライバルが事業拡大を打ち出す中、ソニーは成長戦略の手前で立ち止まっている状況で、就任3年目を迎えた平井社長は崖っぷちに立っている。

 ≪平井社長 事業売却やリストラは年度内に≫

 ソニーの平井一夫社長の記者会見での一問一答は次の通り

 ――2013年度は下方修正を何度も繰り返したが、どう総括するか

 「当社の構造改革のスピードが市場の変化よりも遅かったのが要因だ。パソコン事業を収束したことで、構造改革費用も多くなってしまった」

 ――構造改革を進める上で、これ以上のリストラはあるか

 「大規模な事業売却や社員のリストラを含め、すべてを今年度中に済ませる。来期以降、同様の規模での構造改革は想定していない。また、今期の収益見通しは厳しく見積もっており、下方修正は想定していない」

 ――エレクトロニクス、テレビ事業の今年度黒字化への見込みは

 「テレビ事業は、昨年度は赤字になったが、赤字幅は大幅に減った。コスト構造が強くなった上に、さらに分社化という道を選んでおり、経営スピードは一段上がる。強い商品力や販売会社のコスト構造改善などで黒字化に乗せたい」

 ――黒字化を達成できなかったときの経営責任は

 「構造改革をやりきって、来年度以降、成長戦略にもっていけるようにするのが、期待に応える方法だ」

 ――販売会社ではどのように構造改革を進めるか

 「1960年代から海外に販売会社を広げてきたが、今後は売り上げ減少がドラスチック(過激)な地域はドラスチックに構造改革をしていく。逆に市場が伸びていれば人員も増やす。聖域は設けない」(SANKEI EXPRESS

 【ソニーが発表した経営方針のポイント】

・2015年度に連結営業利益4000億円規模

・2014年度中にテレビ事業の黒字化などエレクトロニクス(電機)部門の構造改革を完遂

・バッテリー事業を強化

・スマートフォン(高機能携帯電話)事業で日本、欧州に加え、米国市場のビジネス強化

・金融分野で介護事業を第4の柱に育てる

・専門組織の立ち上げで新規事業の創出促進

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