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8社増益 「逆ざや」解消で利益還元 生保2014年3月連結決算

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8社増益 「逆ざや」解消で利益還元 生保2014年3月連結決算

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主要生命保険の2014年3月期決算=2014年5月26日現在、※単位は億円。カッコ内は前期比増減率%。▲はマイナス。住友、T&D、富国はグループ生保合算。第一、プルデンシャルは保険料収入が連結、基礎利益が生保合算  主要生命保険13社の2014年3月期連結決算が5月26日出そろい、本業のもうけを示す基礎利益は8社が増益となった。運用環境の改善で外国債券の利息や株式の配当金が増え、10社が、運用利回りが契約者に約束した予定利回り(予定利率)を上回る「順ざや」を確保した。好業績を受けて、明治安田生命保険など4社が個人保険の契約者に対する配当金を引き上げる。

 株高などの市場の追い風を受けて、2014年3月期は新たに第一生命保険とアフラックが運用利回りが予定利回りを下回る「逆ざや」を解消した。

 住友生命保険、朝日生命保険、三井生命保険の3社は逆ざやが続いているが、利回りの乖離(かいり)幅は縮小し、差額を穴埋める負担は減った。26日に会見した住友生命の古河久人常務は「(市場)環境次第だが、15年3月期も逆ざやは減少する」との見方を示した。

 外資系を除く国内大手9社の運用実績の合計は1800億円を超える順ざやとなり、実績公表が始まった2001年3月期以来、通期で初めて逆ざやが解消した。

 9社合計の逆ざや額は一時、1兆円を超えていたが、バブル期に契約した5~6%の高い予定利率の商品が満期を迎えて年々減っているところに、「アベノミクス」を背景とする円安株高効果が加わり、逆ざやの解消が加速した。

 経営改善傾向が鮮明となったことで、明治安田、第一生命、住友生命、富国生命保険が相次ぎ増配を決めた。

 ≪円安株高一服で「本業勝負」色濃く≫

 好業績をたたき出した生保各社だが、15年3月期は一転してほとんどが減益を予想する。円安株高の一服で前期の追い風効果が剥落(はくらく)するからだ。収益の確保には医療・介護など成長分野の販売上積みで、売上高にあたる保険料等収入を回復できるかが問われる。

 「保守的だが、15年3月期は予算上、軽い逆ざやへの戻りを予測している」と第一生命保険の寺本秀雄取締役は明かす。主な運用資産の国債が低金利に張り付いており、前期ほどの運用益は見込めないとみる。

 14年3月期の保険料等収入は主要13社中10社が減収だった。昨年(2013年)4月に金利動向に合わせて貯蓄性商品の利回りを引き下げたことで販売が低迷。「落ち込んだ本業の収入の挽回が今期の勝負どころ」と業界関係者は強調する。

 「明治安田生命です。よろしくお願いします」

 26日朝の東京駅前には、宣伝ティッシュを配る明治安田生命保険の根岸秋男社長(55)の姿があった。明治安田生命保険はこの日、主力の総合保障商品を14年ぶりに刷新して発売した。保障内容を自由に選択・変更でき、単品の医療保険の場合、保険料が従来比3~4割安い社長肝煎りの商品。これを武器に、医療・介護分野の新規契約を3年で3割増やす方針だ。

 生保業界では少子高齢化で保有契約高の減少が続く。ただ医療・介護保険の販売は伸びており、新商品投入が相次いでいる。

 日本生命保険は死亡や医療などを組み合わせる型の主力商品で「選択できる保険を現在の11種類からさらに充実させる」(児島一裕取締役)。第一生命は昨年(2013年)12月に解約返戻金をなくして保険料を半額にした介護保険を投入。住友生命保険も子会社が昨年(2013年)10月に発売した保険代理店向けの終身医療保険の販売を伸ばしている。

 今後は各社の契約者の囲い込み競争が激しさを増す見通しで、その行方が業績の明暗を分けそうだ。(万福博之/SANKEI EXPRESS

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