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「フエルサ ブルータ」東京公演 都会の真ん中で獣の雄叫び

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「フエルサ ブルータ」東京公演 都会の真ん中で獣の雄叫び

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演者たちは地上だけでなく、空中を舞うなど空間を縦横無尽に使って「フエルサ_ブルータ」の世界を繰り広げる=2014年5月10日、東京都港区(中尾由里子さん撮影)  妖精たちがオーロラのようなカーテンの上を駆け回り、白いスーツを着た男が突如として現れる壁を突き破り、空を飛ぶ。気がつけば、頭上には巨大なプールが出現し、美しい女性が水中を舞う。これは、新しいタイプの体験型エンターテインメントショー「フエルサ ブルータ」の1シーンだ。

 「フエルサ」は獣、「ブルータ」は力を意味する。このショーは2005年にアルゼンチンのブエノスアイレスで産声をあげて以来、これまで世界25カ国で上演され、300万人以上が見たという。世界中を巡回公演し、人気を博したこのショーが、5月初旬から待望の東京公演を行っている。6月29日まで。

 まるでおとぎ話か幻想か…。奇想天外なシーンにはさらに、風や水、音や光など五感に訴える刺激が加わり、しかもめまぐるしい速さで展開する。

 「観客が頭で考えるスピードを上回ることによって、理性より直感に訴えたいと思っています」。こう語るのは、生みの親であり、芸術監督のディッキー・ジェイムズ氏だ。

 ジェイムズ氏によると、場所の選定が難しかったために来日までに時間がかかったという。「ショーのセットは壮大で特殊なので、広々としたスペースが必要だ。なおかつ建物の構造にさまざまな条件があるため、日本の場合は会場の選定の難しさが、ハードルとなった」

 念願かない、赤坂の中心部に建てられた特設テントに彼のチームが作り上げたセットが運び込まれ、初日の公演より、大人から子供までさまざまな年齢層の観客が連日、今まで体験したことのないショーを目の当たりにして熱狂している。

 ≪「固定観念から解放される感覚を」≫

 自分たちのショーがなぜここまで国境を越えて魅了するのか。その理由をジェイムズ氏は、次のように分析する。

 「本当のところはわからないけれど、感触としては、私たちが常にエネルギーの100%を超えてやっていることで観客の期待や想像を超えるからでしょう。観客には外と隔離された場所で、次々と繰り広げられる壮大で、力強く、かつ美しい世界に身を委ね、その一部になることによって、一種の固定観念から解放される感覚を味わってもらえたらと思っています」

 激しい「動」の表現に加え、音楽監督のガビー・ケルペル氏が、さまざまな民族音楽からインスピレーションを得て生み出したサウンドにより、まるで観客はカーニバルに参加しているかのような臨場感を持つこと請け合いだ。

 頭上高くの透明のプールで女性たちが浮かぶ演目「MYLAR(マイラー)」では、演者たちのフォーメーションが完成した次の瞬間には、まるでカメラがズームインをするかのように、みるみると観客の頭上まで迫り、最終的には実際にプールの底に触り、演者たちとの距離がグッと縮まる。

 「私たちが音楽を含め、さまざまな表現手法を使って創り上げる世界や雰囲気のストーリーの内容を『これだ!』と私は枠にはめたくはないのです。言葉を使わないで表現することが、ある意味、私たちの『言語』といえるかもしれません。そして、この言語は自由という力を与えてくれてさまざまな境界や文化の違いを飛び越えることができると考えています」という。

 ハイテクの技術を駆使して作り上げられた、「原始的な」体験を生み出す演劇、「フエルサ ブルータ」という名の一種のカーニバルは、都会の中心地で獣の雄叫びを上げ続ける。(写真・文:フォトグラファー 中尾由里子/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 中尾由里子さんが「フエルサ ブルータ」を動画で取材した映像が公開されています。「フエルサ ブルータ」「msn産経」「動画」で検索してください。

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