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【まぜこぜエクスプレス】Vol.10 性別も色とりどり 渋谷にもう一つの「2丁目」

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの社会

【まぜこぜエクスプレス】Vol.10 性別も色とりどり 渋谷にもう一つの「2丁目」

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東京都渋谷区の神宮前2丁目にオープンした「カラフルステーション」の前に集合した杉山文野(ふみの)さん(前列中央)、東ちづる(右隣)と地元やLGBTの仲間たち=2014年5月20日(山下元気さん撮影)  「LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)」の人も、そうでない人も、年齢も国籍も超えてみんなが集えるコミュニティースペース「カラフルステーション」が、東京都渋谷区の神宮前2丁目にオープンした。流行の最先端のスポットでありながら、昔ながらの商店街も残るユニークな街を舞台に、どんな化学反応が起きるのか。東ちづるが突撃取材。

 「聖地」新宿2丁目

 ゲイタウンの新宿2丁目は、セクシュアルマイノリティー(性的少数派)の“聖地”。マイノリティーには居心地よく、普段はマジョリティーだと思っている人たちにとっては、立場が逆転する、非日常的で刺激的なスポットだ。

 新宿・歌舞伎町で育った杉山文野(ふみの)さん(ニューキャンバス代表)には、2丁目も遊び場だった。文野さんいわく「2丁目は、すべてを受け入れる懐の深い街」。そんな街が他にもあれば、多様な人たちがもっと生きやすい社会になるのではないかと考えていた。

 文野さんは、「LGBTと、いろんな人と、いっしょに」をテーマに活動する松中権さん(グッド・エイジング・エールズ代表)と手を組み、「東京にもう一つの2丁目を作りたい!」と、活動を始めた。

 その拠点となるのが「カラフルステーション」だ。1階はアジアン料理を楽しめるカフェレストラン「irodori」、2階は多目的スペースとしても活用できるシェアオフィスになっている。

 自分をオープンに

 LGBTをカムアウトするかしないかは本人しだい。ただその選択が自由に自分らしくできる社会でなくてはならない。文野さんは「セクシュアリティーに関係なく、仕事でも自信をつけることが大切」と考えている。けれども現実は、周囲に自分のことをオープンにできないストレスなどで、職を転々とする人もいる。特にトランスジェンダー(性同一性障害者)の場合、手術、それにかかる費用、戸籍変更などといった壁が立ちはだかり、なかなか定職につけない人も多いのだという。

 文野さんは初対面の人に、「杉山文野です。元女子校生です」と自己紹介をする。立派なヒゲをたくわえ、どこから見ても男性である「彼」の挨拶にたいていの人は目をまん丸くして文野さんをまじまじと見つめる。

 男性から女性へトランスしたケースはテレビなどを通じ知られるようになったが、その逆の女性から男性へトランスした人はあまり知られていない。だからこそ、彼はどんどんカムアウトする。著書『ダブルハッピネス』(講談社)で、そこに至るまでの深く重い葛藤をつづっている。「自分は何者なのか」と向き合ってきたから、彼の言葉には迷いがない。

 「自分をオープンにすることで、いろんな人たちとつながってこれた。さまざまな人が集まるフラットなコミュニティーを作っていくことが自分の役割だと思っている」

 カラフルステーションは都会感と下町感が混在する通りにある。ニュー2丁目は、「私たちはすでにさまざまな人たちと暮らしているんだ」と気づかせてくれる、色とりどりの風が吹く街になる予感がする。(一般社団法人「Get in touch」理事長 東ちづる/撮影:フォトグラファー 山下元気/SANKEI EXPRESS

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