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内在する根源的な悪を映像に 映画「ファイ 悪魔に育てられた少年」 チャン・ジュナン監督インタビュー

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内在する根源的な悪を映像に 映画「ファイ 悪魔に育てられた少年」 チャン・ジュナン監督インタビュー

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「心の中に住む『怪物』と真剣に対峙してほしい」と語るチャン・ジュナン監督=2014年3月17日、東京都港区(宮崎裕士撮影)  「チェイサー」(2008年)などで圧倒的な演技を披露した韓国の名優、キム・ユンソク(46)と、若手実力派、ヨ・ジング(16)のダブル主演で話題を集めたサスペンス「ファイ 悪魔に育てられた少年」。熱量を帯びた作風で知られるチャン・ジュナン監督(44)は「人間に内在する根源的な悪、時に表面化して大暴れするこの『怪物』を映像として取り出し、人間とは何かを探りたかった」と語った。

 敬虔(けいけん)なクリスチャン夫婦を親に持つ青年、ファイ(ジング)は幼少の頃、ソクテ(ユンソク)ら極めて凶暴な5人組の強盗団に誘拐され、その後、親を知らずに17歳になった今までソクテらによって大事に育てられた。犯罪スキルを徹底的に叩き込まれた揚げ句、強盗団の一味としての生活を強いられたファイはある日、忍び込んだ“獲物”の家で不思議な感情にとらわれる。

 時間かけて主役探し

 心優しいファイがソクテからターゲットの殺害を強要され、半狂乱となって実行に及ぶ場面は、思わず目を背けたくなるほど過酷で残忍なものだ。「複雑な感情線を持った青年でなければファイを演じられない。心身が健康でなければ演じた俳優が挫折するリスクもありました。私は韓国で活躍するティーンの俳優のほぼ全員に会い、時間をかけて適任者を探しました」とチャン監督。子役出身だが感情表現に透明感があり、それでいて深みや奥行きも感じさせたのがジングだった。彼は本作で韓国の二大映画賞の一つ、青龍映画賞で新人男優賞を勝ち取った。

 ソクテ役については、脚色の段階から真っ先にユンソクの顔が浮かんだ。「父親とか、集団のリーダーのイメージを思い浮かべると、ぴったりくるのがユンソクです」。とはいっても、ユンソクは出演の打診に「重く、深い人物だ。この人物を演じきらねばならないという重圧に耐えられるか自信がない」と尻込みし、一度は丁重に断ったという。その後も続くチャン監督の粘り腰に「なかなか出会えないキャラクターだから挑戦したい」と折れ、出演を承諾したそうだ。

 次第にソクテに反発を強めていくファイは、自分の意思で新たな人生を模索し始める。「善悪両方の遺伝子を受け継いだファイは、やがてこれまでの自分の生き方を超越し、ある種、神のような存在へと昇華されていく。それは僕の希望でもあります」。チャン監督の人間観がファイに託されている。4月19日から全国順次公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:宮崎裕士/SANKEI EXPRESS

 ■Joon-Hwan Jang 1970年1月18日、韓国・全州生まれ。監督デビュー作の「地球を守れ!」(シン・ハギュン主演)でモスクワ映画祭、青龍映画賞、大鐘賞映画賞などの監督賞を受賞。オムニバス映画「カメリア」では、近未来ストーリー「LOVE FOR SALE」(カン・ドンウォン主演)を演出。妻はベネチア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞にも輝いた女優のムン・ソリ。

 ※映画紹介写真にアプリ【かざすンAR】をインストールしたスマホをかざすと、関連する動画を 視聴できます(本日の内容は6日間有効です<2014年4月23日まで>)。アプリは「App Store」「 Google Playストア」からダウンロードできます(無料)。サポートサイトはhttp://sankei.jp/cl/KazasunAR

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