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【まぜこぜエクスプレス】Vol.4 人に勇気や希望与えたい 松葉づえの写真家 山下元気さん

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【まぜこぜエクスプレス】Vol.4 人に勇気や希望与えたい 松葉づえの写真家 山下元気さん

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写真家の山下元気さん(左)に、一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづるさんがインタビューで迫った(山下元気さん撮影)  「まぜこぜエクスプレス」を飾るすてきな写真を撮影してくれているフォトグラファーの山下元気さん(32)。きらきらと希望が輝くような明るい写真を撮る元気さんだが、実は大きな事故の後遺症で医師から「一生寝たきりの生活になる」と宣告された過去を持つ。「まぜこぜの社会」の実現を目指す一般社団法人Get in touchの東ちづる理事長が元気さんに迫った。

 初めて知った事故

 何度も会っているのに、インタビューをして初めて松葉づえの経緯を知った。「そんなこと詳しく話しても楽しくないじゃないですか~」と、元気さんは笑う。

 「ハーレーのビルダー(整備士)になる」という夢を持っていたが、19歳のとき、そのハーレーダビッドソンのバイクに乗っていて事故に巻き込まれた。車と衝突しバイクは炎上。対向車線に投げ出された元気さんは走ってきた車にはねられ、何十メートルも飛ばされた。即死でもおかしくないほどの大事故だったという。夢も絶たれた。

 一時的に回復したものの、2年後に、事故で身体が圧迫されたことが原因の「クラッシュ症候群」の進行とともに、その症状からの弊害も併せて首から下の運動機能を奪われた。2、3年間、施設で24時間介護を受けながら、ほとんど寝たきりの生活を送ることになる。医者からは「回復は不可能」と宣告された。しかし、元気さんはあきらめなかった。

 本やテレビ番組でさまざまな困難を自分の意思で乗り越えた人たちがいることを知った。「どんな状態に置かれても、自分を信じる気持ちが大切」「努力は必ず形になる」と、元気さんは思ったのだ。耳栓を、取るときはピンセットが必要なほど奥まで突っ込み、一切を遮断して、自分自身に呪文のように唱えた。「治す! 絶対動けるようになる!」と。

 不思議な角度で撮影

 手足も動かせない状態から、まずは手のひらでグー、パーをすることから始め、毎日、グー、パーが何回できたかを数えた。3万回まで数えたのが約1年。その後、上半身を動かす独自のリハビリで車椅子に移動できるようになった。そして車椅子から松葉づえで立てるように…。

 「奇跡ですね」。私は思わずそう言ってしまい「しまった!」と後悔。奇跡ではない。彼が自分の意思でそうしたのだ。

 「人間はすごいんです。僕が証明です」

 車椅子から立ち上がれるようになるまでのリハビリも壮絶だったことだろう。自暴自棄になり泣き暮らした日々もあったというが、その不屈の精神で、もうひとつの夢だったカメラマンになることもかなえた。

 松葉づえやそのあたりにあるものを駆使してカメラを構える姿は、アクロバットのようでクールだ。不思議な角度から撮られた写真はおもしろい。元気さんは「自分の存在を知ってもらうことで、人に希望を与えたい」と話す。かつての自分が「あきらめないこと」の大切さを本やテレビで知った人たちから教えられたように。

 これからもこの紙面を輝かせてくれるのを楽しみにしている。(一般社団法人「Get in touch」理事長 東ちづるさん/撮影:写真家 山下元気/SANKEI EXPRESS

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