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【まぜこぜエクスプレス】Vol.3 アートで人と人つなぐ復興支援 広島で東北在住作家の作品展

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【まぜこぜエクスプレス】Vol.3 アートで人と人つなぐ復興支援 広島で東北在住作家の作品展

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田崎飛鳥氏の絵画「希望の一本松」と、一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづるさん=2014年4月6日(松浦康高さん撮影、提供写真)  東日本大震災からの復興を継続的に支援しようと企画された東北在住のアーティストたちによるチャリティー作品展「よりそう Get in touch!」(主催・公益財団法人 泉美術館、東ちづる)が4月20日まで、広島市にある泉美術館で開かれている。

 アーティストたちの多くは知的障がいなどのハンディキャップを持ち、福祉作業所などに通いながら創作活動を続けている。日本では知的障がいなどをもつアーティストの作品を「アールブリュット」や「アウトサイダーアート」「エイブルアート」「ボーダーレスアート」などの名称で呼ぶことが多い。けれども、そうしたカテゴライズをすることなく、単にアート作品展とうたっている。それは、先入観を持たずに自由な感性で作品を鑑賞してほしいという思いからだ。

 動揺乗り越え創作

 岩手県陸前高田市に住む田崎飛鳥は津波で家が流され、200点以上の作品を失った。多くの親しい人たちとの別れも経験した。震災による心の動揺は大きく、しばらく絵を描くことができなかった。それでも、津波で亡くなった親しい人たちの肖像画、そして高田松原で1本だけ残った「奇跡の一本松」を描き始め、現在は意欲的に創作を続けている。

 福島県いわき市在住の蒲生卓也は美しい色彩と温かな画風で近年、数々の展覧会で注目を集めている画家の一人だ。現在、知的障がいの生活介護施設に通う蒲生は好きな図鑑や写真集などから魚、花、鳥、小動物などのモチーフを選び、ほぼ毎日、日記をつけるように絵を描き続けているという。

 そのほか、伊藤峰尾、土屋康一、星清美、森陽香ら、社会福祉法人「安積愛育園」(福島県郡山市)が運営を手がける創作活動支援プロジェクト「unico」で活動するアーティストの作品を展示している。

 被災地との温度差

 広島の人たちは、原子爆弾が投下された8月6日を「ハチロク」と呼ぶ。この日を迎える度に、「被爆や平和への意識に県外の人と温度差がある」と嘆く広島の人がいる。では、震災の「サンテンイチイチ」は? まだ3年しかたっていないにもかかわらず、同じように温度差を感じている被災者は少なくない。

 建物や橋、道路を整備していくのも復興だろう。だがインフラを整えるだけでなく、人と人のつながりを取り戻すことが再生には欠かせない。アピールすることもせず、評価を気にすることもなく黙々と表現を続けるアーティストたちが被災地にいる。「人と人とのつながりを取り戻す」という復興支援があってこそ、彼らの才能の種も花開く。(一般社団法人「Get in touch」理事長 東ちづる/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■「よりそう Get in touch!」 <場所>泉美術館(広島市西区商工センター2の3の1 (電)082・276・2600。izumi-museum.jp)第1展示室(エクセル本店5階)。<期間>3月5日~4月20日(月曜休館、午前10時~午後5時)入場無料。<主催>公益財団法人 泉美術館、東ちづる。<協力>一般社団法人「Get in touch」など

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