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堂々とぶっきらぼうに 「ひとり飯」を堪能 「野武士のグルメ」原作・久住昌之さん&画・土山しげるさん
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久住(くすみ)昌之さん(左)と土山しげるさん、グルメ漫画界のスターが初タッグを組んだ=2014年3月27日、東京都渋谷区(塩塚夢撮影)
夢のタッグが実現-。ドラマ化もされた大ヒットコミック『花のズボラ飯』『孤独のグルメ』などの原作者として知られる久住昌之さん(55)のエッセー『野武士のグルメ』が、『極道めし』など、食の表現の新境地を切り開き続けるマンガ家、土山しげるさん(64)の手でコミック化された。ページを繰ればおなかが鳴ること必至のグルメコミックだ。
主人公は定年退職した元サラリーマン、香住武。平日の昼下がり、キーンと冷えたビールとともに、ひとり焼きそばをすする。「これがしたかったんだ…」。これが香住の食をめぐる“冒険”の始まりだった。これからは、堂々と、ぶっきらぼうに、誰にも遠慮せず食と対峙(たいじ)するのだ。そう、野武士のように-。
原作のエッセーは、久住さんが食のあれこれについてつぶやくようにつづられたもの。「香住武」というキャラクターは、コミック化にあたって初めて登場した。その狙いを、土山さんはこう説明する。
「最初はそのまま久住さんを描こうかと思っていたんですが、なかなかうまくいかなくて。ある時、野武士というキーワードから、一線を退いた定年退職者、というイメージが浮かびました。実際、僕の同級生も8割が定年退職している。まじめに勤め上げてきて、これからの人生何をしようか…。不安もあるけれど、同時に開放感もすごくある。ふらりと民宿に泊まって、思う存分朝寝坊できる…みたいなね。そのあたりの感情を、リアルに描きました」
久住さんも、「最初はどうなるんだろう、って思ってたんです。土山さんの作品といえば、口をぐわっと開けてわしわし食べる様子が大きいコマでバーンと描かれているイメージ。『野武士~』はそんなシーンないしな…なんて(笑)。でも、香住のラフ画を受け取ったときに、『ああ、この人の話になるんだ』ってすごくしっくりきた」と、新たな物語が動き出した瞬間を振り返る。
自身もマンガ家として活動する久住さん。土山さんの解釈について「プロフェッショナル」と絶賛する。「絵にすべきところをビシッと切り取っている。たとえば、大衆酒場で常連客が『雨漏りがひどくて店の中で傘をさして飲んだ』と回想するシーンがあるんです。文字では伝わりづらいけれど、絵にすることによって、すごく面白いシーンになっている」
物語にリアリティーを生み出しているのが、香住のキャラクター。「とにかくまじめな男」と土山さんが言えば、久住さんも「若いめいにスキヤキをごちそうする話があるんですが、めいの顔は描かれていない。きっと、若い女の子の顔をまじまじと見られる男じゃないんだろうな(笑)」。まじめに生きてきた男だからこそ、少しずつ“ひとり飯”の世界へと歩み出していく姿が、いじらしく、そしてかわいくすら思えてしまう。
今回登場するのは、町の食堂や居酒屋といった身近な店ばかりだ。「高い店に入ると逆に緊張しちゃうし。うんちくは一切ないです」(土山さん)
焼きそばのソースの香り、タンメンの野菜の食感と、五感を刺激する描写の数々。実生活でも食いしん坊の2人だけに、「描いていて食べたくなって困った(笑)」(土山さん)という。スキヤキ、アジの開き、麦とろ飯…。読んだら、食べずにはいられない!(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)