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人生は短い。今しか撮れないと感じた 映画「LIFE!」 ベン・スティラーさんインタビュー

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人生は短い。今しか撮れないと感じた 映画「LIFE!」 ベン・スティラーさんインタビュー

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「アナログライフに敬意を払い、モノつくりの大切さを再確認しようとすべてフィルムで撮影しました」と語るベン・スティラー監督=2014年3月18日、東京都港区(原田史郎撮影)  米ハリウッドのコメディースター、ベン・スティラー(48)が監督、主演、共同プロデューサーを務めた新作「LIFE!」が、日本の興行収入ランキングで初登場3位となった。作品は、生来の臆病者で、空想の中でしか思い切った行動を起こせず、地味でむなしい日々を甘んじて受け入れてきた中年サラリーマン、ウォルター・ミティの物語。本当に自分の生き方はこれでよかったのか-と感じている日本人がよほど多いのだろう。天命を知る年齢に近づくスティラーもそんな一人のようだ。SANKEI EXPRESSの取材に「僕もこの歳になり、『今、やりたいことをやらないと次のチャンスはないかもしれない。人生はあっという間に過ぎてしまうから』と、急に考えるようになったんだ。この作品の構想を練っている段階で、今の僕しか撮れないものだと直感的に思ったので、何としても形にしたかった」と、悲壮感すら漂う真摯(しんし)な答えが返ってきた。

 自分の挑戦を投影

 米作家・漫画家、ジェームズ・サーバー(1894~1961年)の短編小説を映画化した1947年「虹を掴む男」(ノーマン・Z・マクロード監督、ダニー・ケイ主演)を、スティラーが独自の味付けを施した。

 老舗の米グラフ誌「LIFE」で長年、写真管理に従事してきたウォルター(スティラー)の楽しみといえば、所構わず空想にふけること。思うままにならない現実から逃避できる唯一の手段だった。そんなある日、LIFEの休刊が決定。ウォルターは会社に乗り込んできた新経営陣から最終号を飾る写真のネガフィルムの提出を求められたが、なぜか自分の仕事場に保管されていない。

 きっちりと仕事をこなしてきたつもりのウォルターは納得がいかず、真相を探ろうと、撮影者の冒険写真家(ショーン・ペン)を追いかけ、北極圏のグリーンランドやアイスランドの火山地帯へと決死の旅に出る。

 これまで映画ファンを楽しませてくれたコメディー作品から、本作ではシリアスな人間ドラマへと雰囲気ががらりと変わった。ウォルターの空想シーンで笑いを誘うやり取りやアクションが“照れ隠し”に残されている程度だ。スティラーは「間違いなく僕にとって転機となった作品です。ウォルターは住み慣れた『コンフォートゾーン』にとどまらず、そこから抜けだし旅に出ました。僕も思い切って慣れ親しんだカテゴリーから一歩足を踏み出して、新しいものを作ろうと思いました。実は新しい作風に挑んだ僕の旅への思いこそが、ウォルターの旅にも投影されているんですよ」と明かした。

 変化は外見に表れる

 ウォルターは旅を続けるうちに、生きることの意味に気づくばかりか、ビジュアル的にもだんだんとりりしい顔つきになっていき、身なりも洗練されてくることに見る者は気づくだろう。スティラーの意図はこうだ。「この映画はウォルターの内面がいかに変化していくかを描いています。どう見せるかは、もちろん、スタッフたちと相談を重ねました。自分自身、減量もしましたよ。結論としては、人間はこれだけの人生経験を積めば、おのずと見た目も中身も目に見えて違ってくるだろうとの判断です。衣装が変われば、演じる側の意識も変わるだろうとの考えもありました。最終的に彼の人生は充実感に満ちあふれたものとなりましたよね」

 ショーン・ペンの考え

 やっとの思いで、ウォルターは足場の悪い険しい岩山で幻のユキヒョウを撮影中の冒険写真家をつかまえる。そこで冒険写真家がつぶやいた「美しいものは注目を嫌う」とのセリフが実に印象的だ。「これはショーンが考えたんだ。彼がぜひ語らせたいと言ってね。彼の中では、美しいものとは、ユキヒョウではなく、ウォルターのことを指していると思うんですよ。ウォルターは仕事を黙々とやっていて、注目を求めなかったからね」。

 スティラーはオスカーを2度も手にした大スターのペンの仕事ぶりにも、静かで威厳に満ちたウォルターと同じにおいを感じとったそうだ。「ペンはユキヒョウの場面の撮影が終わると、当たり前のように撮影機材に歩み寄り、スタッフと一緒に担いで下山を始めたんです」。全国公開中。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:原田史郎/SANKEI EXPRESS

 ■Ben Stiller 1965年11月30日、米ニューヨーク市ブルックリン生まれ。10代から8ミリ映画の制作に没頭。UCLA退学後、舞台俳優デビュー。映画では、監督作に94年「リアリティ・バイツ」、96年「ケーブル・ガイ」、など。主な出演作は1998年「メリーに首ったけ」、2000年「ミート・ザ・ペアレンツ」、監督を務めた2001年「ズーランダー」、08年「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」、06年と09年「ナイト ミュージアム」シリーズなど。

 ※映画紹介写真にアプリ【かざすンAR】をインストールしたスマホをかざすと、関連する動画を 視聴できます(本日の内容は6日間有効です<2014年4月2日まで>)。アプリは「App Store」「G oogle Playストア」からダウンロードできます(無料)。サポートサイトはhttp://sankei.jp/cl/KazasunAR

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