SankeiBiz for mobile

主人公と一緒に極限状況を体験 J・C・チャンダー監督 映画「オール・イズ・ロスト 最後の手紙」

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSのエンタメ

主人公と一緒に極限状況を体験 J・C・チャンダー監督 映画「オール・イズ・ロスト 最後の手紙」

更新

J・C・チャンダー監督は「鳴かず飛ばずだった若い時代に、いい作品を撮ろうと努力を続けた自分の姿も作品に重ねています」と語る(アルシネテラン提供)  いよいよ人生の最終局面を迎えんとするとき、人間は静かにそれを受け入れるのか。それとも、寿命や運命にあらがい、活路を見いだそうとするのか-。J・C・チャンダー監督(39)が新作「オール・イズ・ロスト 最後の手紙」で真正面から生きざまを問いかけた。せりふもなければ、登場人物も1人しかいない。ロバート・レッドフォード(77)扮する主人公のヨットマンを、大海原を漂流する遭難ヨット内に“閉じ込め”、彼の行動の一部始終をひたすら傍観していく、毛色の違う撮影スタイルをとったチャンダー監督は、SANKEI EXPRESSの電話取材に「観客たちに主人公と一緒に極限状況を体験してもらいたかった。そのためには主人公は1人の方がいい。作品には見た後に気分が高揚する作品になればいいなと願いを込めました」と語った。

 レッドフォードしかいない

 インド洋をヨットで単独航海していた男(レッドフォード)は、船内で惰眠をむさぼっていたが、激しい水の音で目を覚ます。船体に穴が空き、大量の海水が船内に流れ込んでいた。男が甲板に出ると、海上を漂流していた大きなコンテナがヨットの側壁に突き刺さっていた。無線もパソコンも海水にのまれ、使い物にならなくなってしまい、通信手段を奪われた男は…。

 幼い頃から家族とヨット遊びを楽しんできたというチャンダー監督は、海を見ると眠っていた冒険心を駆り立てられるそうだ。「人類の歴史の進み方を考えてみても、海洋でさまざまに繰り広げられた冒険がその推進力として果たした役割が大きいと思うんです。船がいろんなものを運ぶことで、世界をまたにかけて貿易も盛んになりました。現在、必ずしも大好きなヨットが人間の生活に欠くべからざるものではなくなりましたが、どの国の歴史にも登場する普遍的なアイコンだとは思うんですよ」

 レッドフォードは撮影時にすでに75歳と高齢だったが、猛烈な風雨の中でまさに沈没せんとするヨットを懸命に立て直す姿をみると、むしろ屈強な男といってもいい。チャンダー監督はレッドフォードに出演を打診した理由として「すでに役者が観客と強い信頼関係を持っていれば、観客はあきずに1人芝居についていくことができます。もちろん肉体的にもハードな演技をこなせる人がほしかった。だとすれば、主人公はレッドフォードしかいなかったんです」と答えた。レッドフォードはチャンダー監督から出演打診を受けた5日ほど後、「やるよ」と電話をかけてきた。チャンダー監督は主人公の内面にレッドフォードと相通じるものがきっとあったに違いないと感じたという。

 進歩を信じる力は大切

 チャンダー監督は自ら掲げた冒頭の問いかけに対してどんなスタンスを取っているのだろう。「今日の自分の能力より少し前進すれば、あすにはもっとレベルアップした自分がある-。そう思える力が人間にはあるからこそ、人間はたくさんのことができるようになった。あすの進歩を信じる力は、愛することと並んで、人間に備わった大切な資質だと思うんです」。ただ指をくわえて現状を受け入れるようなタイプではなさそうだ。本作は第71回ゴールデングローブ賞作曲賞を受賞。3月14日、全国公開。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS

 ■J.C.Chandor 1974年11月24日、米ニュージャージー州生まれ。オハイオ州のウースター大学でアメリカン・スタディーズと映画学の学士号を取得。ニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。脚本も手がけた2011年「マージン・コール」で長編デビュー、米アカデミー賞脚本賞にノミネートされたほか、ニューヨーク映画批評家協会賞の新人監督賞など数々の賞を手にした。

 ※映画紹介写真にアプリ【かざすンAR】をインストールしたスマホをかざすと、関連する動画を視聴できます(本日の内容は6日間有効です<2014年3月19日まで>)。アプリは「App Store」「Google Playストア」からダウンロードできます(無料)。サポートサイトはhttp://sankei.jp/cl/KazasunAR

ランキング