いよいよ人生の最終局面を迎えんとするとき、人間は静かにそれを受け入れるのか。それとも、寿命や運命にあらがい、活路を見いだそうとするのか-。J・C・チャンダー監督(39)が新作「オール・イズ・ロスト 最後の手紙」で真正面から生きざまを問いかけた。せりふもなければ、登場人物も1人しかいない。ロバート・レッドフォード(77)扮する主人公のヨットマンを、大海原を漂流する遭難ヨット内に“閉じ込め”、彼の行動の一部始終をひたすら傍観していく、毛色の違う撮影スタイルをとったチャンダー監督は、SANKEI EXPRESSの電話取材に「観客たちに主人公と一緒に極限状況を体験してもらいたかった。そのためには主人公は1人の方がいい。作品には見た後に気分が高揚する作品になればいいなと願いを込めました」と語った。
レッドフォードしかいない
インド洋をヨットで単独航海していた男(レッドフォード)は、船内で惰眠をむさぼっていたが、激しい水の音で目を覚ます。船体に穴が空き、大量の海水が船内に流れ込んでいた。男が甲板に出ると、海上を漂流していた大きなコンテナがヨットの側壁に突き刺さっていた。無線もパソコンも海水にのまれ、使い物にならなくなってしまい、通信手段を奪われた男は…。