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寺山さんが見ようとした景色が見えてくる 音楽劇「宝島」 未唯mieさんインタビュー
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「プロジェクト・ニクスの世界観は衣装もセットもファンタジーにあふれて素敵なんです」と女優の未唯mie(みい)さん。バラ柄の海賊船に乗って=東京都中野区の芝居砦・満点星(野村成次撮影) 「大事なセリフを言うときの、『ここぞの音程』がある。リズムやテンポ、音程を意識してセリフを言って、今、体に演技を染みこませているところです」。アイドルデュオ「ピンク・レディー」で一世を風靡した未唯mie(55)が、築50年以上たつ地下2階の稽古場で、歌手らしい独特の感覚で演技について語り出した。
2月7日に開幕する主演舞台「宝島」は、実験的な劇作の数々を残して早逝した寺山修司(1935~83年)が、英作家ロバート・ルイス・スティーブンソン(1850~94年)の冒険小説をもとに書いた音楽劇。それを、アングラ演劇を今に継ぐ劇団「新宿梁山泊」代表の金守珍(59)が演出。構成・美術は、寺山の劇団「天井桟敷」の美術を担当したイラストレーター、宇野亜喜良(79)が手がけ、新宿梁山泊の看板女優が立ち上げた女性演劇ユニット「プロジェクト・ニクス」が上演する。
なぜ未唯mieが地下の稽古場で、寺山作品の稽古に励むことになったのか。実は未唯mieは寺山逝去の翌84年、寺山作のロックミュージカル「時代はサーカスの象にのって’84」に主演。共演した天井桟敷出身の蘭妖子と縁が続き、今回の出演につながった。トップアイドル時代は「正直、寺山さんの作品の意味がよくわかってなかった」と明かす。あれから30年。宝島では主役の海賊シルバーだけでなく、寺山修司役も演じる。そのため寺山を知る金や宇野に取材をし「虚構の世界を表現するのがとても好きで、自身の正体でさえかぶいて見せた。シャイで少女っぽい面もあり、人を楽しませるのが好きだった」という寺山の素顔を聞き出し、「寺山さん、よかったら私の体を使って表現して」という境地で演じることにした。
寺山は鋭敏な感性で言葉を紡いだ。セリフとして寺山の短歌や詩を口にするたび「寺山さんが見ようとした景色が見えてくる。寺山さんの言葉には、想像を羽ばたかせる余白のようなものがある。それでいて哀愁があり、魂の故郷を感じるというか…胸に迫ってくるんです」。
演劇に観客を巻き込み、作り手として関わることを求めた寺山らしい試みが、宝島の結末に仕掛けられている。「生きるうえでの宝ものって何なのか、一緒に見つけてもらえたら」。そう言って未唯mieは、宝探しの旅に誘った。(文:津川綾子/撮影:野村成次/SANKEI EXPRESS)
2月7~16日 東京芸術劇場シアターウエスト(東京)。プロジェクト・ニクス(電)03・6312・7031