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種田陽平による三谷幸喜映画の世界観展 美術で「リアル」と「おとぎ話」共存
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映画美術を通して、作品の魅力に迫る「種田陽平による三谷幸喜映画の世界観展」が東京・上野の森美術館で開催されている。日本のみならず、活躍の場を世界に広げる美術監督の種田陽平氏(53)が手がけた「THE有頂天ホテル」「ザ・マジックアワー」「ステキな金縛り」から、11月9日公開の最新作「清須会議」までの三谷幸喜監督作品で使われたセットの資料や装飾、小道具の数々を間近で見ることができる。
4本の作品で「リアル」と「おとぎ話」を共存させ、三谷映画の世界観を表現してきた種田氏は、今月(10月)11日に行われた開会式で「建て込み風景から完成まで全部をわかるように見せています。手作りのセットを体感してもらい、映画の美術の役割、良さを確認してもらいたい」とあいさつ。メガホンをとった全6作のうち、4作でタッグを組んだ種田氏に対し、三谷監督は「種田さんは映画の先生。全てを教えていただきたいし盗みたい」と信頼を口にした。
≪コンビ4作品 こだわりの作り込み≫
赤い扉の奥に広がる三谷・種田両氏の世界-。会場は映画館の劇場に見立てられ、一つの劇場に一つの作品ずつ展示されている。
2人の初顔合わせは2006年公開の「THE有頂天ホテル」。映画を見た人がこのホテルは実在するものだと思い込み、同名のホテルに予約を入れて、行ってみたらビジネスホテルだったというエピソードも残るリアルな描写。ロゴまで種田氏が手がけたというアメニティーは必見だ。
2作目「ザ・マジックアワー」(08年)は、架空の港町、守加護(すかご)を東宝スタジオ(東京・成城)のステージにまるごと建てた。これまでの日本映画にはなかったスケールのみならず、建物を2階建てにし登場人物の垂直の動きを可能にするなど特長あるセット。町の模型を見るのも楽しい。
幽霊が法廷に立つという奇想天外な「ステキな金縛り」(11年)は日本映画には見られないすり鉢状の法廷が主役。ビリー・ワイルダー監督「情婦」(1957年)に登場する英ロンドンの裁判所を参考にしたという。物語のおとぎ話的な雰囲気を壊さぬよう、種田氏はあえて「作り物感」を出す手法で、床の大理石を描き、扉の木材に木目を書き足している。
コンビ4作目、三谷監督にとって初の時代劇となった最新作「清須会議」でも息の合った仕事を見せた。監督が「今回の一番の大きなうそ」と話すのは、清須城そのもの。織田信長亡き後、天下獲りをめぐり繰り広げられた会議の舞台となるその城は主役同様に重要だ。一般的に清須城が実在した時代は天守閣が存在しなかったと言われているが、種田氏は歴史作品では時代考証より、作品の世界観とマッチするかが大事との考え。「ゴージャスな金閣寺と侘び寂びの銀閣寺を足して2で割ったような2階建ての天守閣」ができあがった。フロア中央に、柿葺(こけらぶき)の屋根一枚一枚にもこだわった模型が鎮座する。
会場2階は、主に海外作品を紹介。クエンティン・タランティーノ監督の「キル・ビル Vol.1」をはじめ、いずれも日本公開未定のチャン・イーモウ監督作「ザ・フラワーズ・オブ・ウォー;金陵十三釵」とハリウッド俳優のキアヌ・リーブスが初監督した「マン・オブ・タイチー;太極侠」などでその手腕を見ることができる。(EX編集部/撮影:桐山弘太、フォトグラファー 中川容邦/SANKEI EXPRESS)
上野の森美術館(東京都台東区上野公園1の2)。~11月17日(日)、午前10時~午後5時(入場は閉館の30分前まで。土曜日、11月3日と15日は午後8時まで開館)。会期中は無休。会場内では、三谷、種田両氏が声で登場する音声ガイドを貸し出し中。三谷氏のユーモアあふれる話と種田氏の作り手ならではの解説が楽しめる。入場料など問い合わせは(電)03・3833・4191。公式サイトはwww.tanemita.com