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世界的資料も多数 蔵書コレクション(上) シェークスピア初版本の謎に迫る

 「私たちの通っている大学の図書館には、すごい蔵書がある」。東京都日野市と青梅市にキャンパスを持つ明星(めいせい)大学には、約88万冊に上る蔵書がある。英国の劇作家、ウィリアム・シェークスピア(1564~1616年)の戯曲を集めて出版された初めての作品集「ファースト・フォリオ」のコレクションなど世界的に貴重な歴史資料も数多い。大学は今年で創立50周年を迎え、記念事業として資料を所蔵する図書館のリニューアルが行われている。明星大学の学生記者が時空を超えて現代に伝わる蔵書に秘められた謎をリポートする。

 □今週のリポーター 明星(めいせい)大学 有志学生記者

 2014年に創立50周年を迎えた明星大学では、さまざまな記念事業が行われている。なかでも注目したのが、世界的に貴重な資料を所蔵する「明星大学資料図書館」(日野キャンパス)のリニューアルだ。

 明星大学には約88万冊の蔵書があり、なかでも、今年生誕450年を迎えるシェークスピアの作品集の初版本である「ファースト・フォリオ」は、貴重な歴史資料として世界に知られている。

 海外の研究者も閲覧

 明星大学は、こうしためったに出会うことのできない「稀覯書(きこうしょ)」と呼ばれる書物を多数所蔵している。「学生たちに本物に触れる感動を体験してほしい」との思いから、30年をかけてさまざまな分野の著名な書物の初版本を中心に収集してきた。

 めったに入ることができないという「稀覯書室」を訪ね、シェークスピアを研究する人文学部の住本規子教授(64)を取材することができた。

 ファースト・フォリオはシェークスピアの死から7年後の1623年に友人らによって出版された。現在、世界に200冊ほどしかなく、米国の「フォルジャー・シェークスピア・ライブラリー」に世界最多の82冊があり、明星大学は2番目に多い12冊を所蔵している。そのコレクションは世界的に広く知られており、海外からも研究者が閲覧のために訪れるという。

 400年間で変化

 住本教授は、「ファースト・フォリオは、現代の日本人の英語の知識でもかなり読めてしまうのです」と話す。一方で、出版から約400年の間に英語そのものが変化しており、現代の英語との違いを発見できるのもおもしろいという。

 例えば、「ファースト・フォリオ」では、アルファベットの「u」と「v」が現代とは逆になっている。「TO the memory of my beloued,The AVTHOR」という文章が出てくるが、現代の英語では「To the memory of my beloved,The AUTHOR」になる。

 17世紀初期までは、一定の法則で「u」と「v」が逆に使われていたそうだ。「w」というアルファベットも、「v」と「v」が並んでいるが、「ダブル・ヴィー(v)」ではなく、「ダブル・ユー(u)」と読む。「wの謎」が解けた!

 さらに注意深く読むと、「J」と「j」がほとんど出てこない。代表作「ロミオとジュリエット」は、1623年の「ファースト・フォリオ」では「ROMEO and IVLIET」と表記されている。これが、85年に出版されたフォース・フォリオでは「ROMEO and JULIET」と、現代の英語と同じように表記されている。この60年間に「J」がよく使われるようになったかもしれないのだ。

 人気の秘密は…

 驚きなのは、英語の変遷が分かるだけではない。住本教授によると、「ファーストからセカンド、サード、フォースと出版を重ねるうちに、印刷の間違いなどで本文が変わってしまうこともあった」というのだ。ファーストはシェークスピアのオリジナルに近いものだと重宝されているが、「シェークスピアの死後に出版され、現在のように出版に当たり著者が厳密にチェックしたわけではないので、これが本当にシェークスピアが書いた通りなのか誰にも分からない」と、住本教授は教えてくれた。

 まさに謎ばかり。謎こそがシェークスピアの人気の秘密なのかもしれない。(今週のリポーター:明星大学 有志学生記者/SANKEI EXPRESS

 【女子学生に聞く! シェークスピア作品の知名度ランキング】

第1位 ロミオとジュリエット

第2位 ハムレット

第3位 リア王

※1位の『ロミオとジュリエット』は満票で選出。誰もが知っている代表作であることが分かった。

明星(めいせい)大学 有志学生記者

 <取材・記事>

石原智里(人文学部2年)、工藤未咲(教育学部1年)、駒崎琴美(教育学部1年)

 <写真>

黒田清哉(人文学部4年)、荻野望(経営学部2年)

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