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許氏に実刑 「穏健派」さえ抑え込む中国

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許氏に実刑 「穏健派」さえ抑え込む中国

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中国・香港  【国際情勢分析】

 中国の憲法を基に人権擁護などを訴える「新公民運動」を主導してきた法律学者の許志永(きょ・しえい)氏(40)が1月26日、北京市第一中級人民法院(地裁)の判決公判で、公共秩序騒乱罪で懲役4年の実刑判決を言い渡された。中国当局が穏健派の人権活動家までも弾圧したことに対し、とりわけ人権問題に関して敏感な欧米メディアが一斉に非難した。

 「新公民運動」を主導

 1月27日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルWSJ、アジア版)は、「中国当局が許氏のような“穏健派”さえ拘束し始めたことは、大変残念なことであり、海外で広く非難されている。『新公民運動』のモットーは自由、公正、愛であり革命的ではない」と許氏を擁護した。

 その上で、WSJは「許氏や彼の信条を共有する人々は、政権に対する新しい深刻な脅威となっている。『新公民運動』の基本は、リーダーを持つことでも組織化されることでもない。民主主義の中国のためのビジョンを明確にする際、民衆の抵抗を再結集することがこれまでうまくいっていることが分かった。このことから許氏らを閉じ込めることは、政府の脅威を減らすことにほとんど役立たない」と指摘している。

 またWSJは「彼が指向する市民による参加型民主主義、人権、法の支配、そして憲法による国家権力の制限なども現在の中国の立場から見れば“急進的”と中国当局がみているため」と分析した。さらにWSJは「習近平国家主席は潜在的な不安定を伴う経済改革を推し進める間、政権を強化するために弾圧を追求した」というアナリストの解説を載せた。

 薄れる政治改革への期待

 ロイター通信(電子版)は(1月)27日、「許氏への実刑判決は、中国共産党の支配に対するいかなる挑戦も握りつぶす当局の強硬な姿勢を示し、人権活動家への厳しい警告となった。また、経済改革への着手を約束した中国で、政治改革が行われることへの期待は薄れた」とした。

 許氏は「新公民運動」の中で政府職員の資産公開を求めてきたが、ロイター通信は(1月)28日、「習近平国家主席は腐敗と闘うことを優先事項にしているが、当局は全政府職員の資産公開の要求に対して同意しなかった。また資産の開示を求めた少なくとも20人の活動家が拘留された」と非難した。

 1月27日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(国際版)は、「2012年11月に発足した習近平体制下で注目の活動家に対する初めての裁判として、今回の判決は今後10年続く中国の新しいリーダーシップが改革の要請にどう応えるかのバロメーターになるとみられていた。進歩的文化人や人権活動家たちは、変化のための穏健的なキャンペーンを展開する許氏が、前任者(胡錦濤国家主席)より寛容に受け入れられることを望んでいた」と失望感をあらわにした。

 党支配下にある裁判所

 今回の判決を受け、仏紙ルモンド(電子版)は(1月)27日、「反体制派や批評家の裁判では、当局が裁判所をコントロールしている。正義の否定や露骨な手続き上の違反が頻繁に行われている。裁判所はこれらの違反を処罰する、いかなる裁量権も持たず、ただ最高権威機関である中国共産党の命令を実行している」と中国の司法制度の問題点を挙げた。

 主要韓国紙東亜日報(電子版)は(1月)28日、「記者の目」というオピニオン欄で、同紙国際部記者がこの判決について「中国当局は下からの社会運動を放置すれば政治体制に対する挑戦につながるかもしれないと憂慮しているようだ。だが、かえって適切な水準の人権社会運動を通じて国民の変化欲求が濾過(ろか)されなければより一層、組織化してややもすると体制の外に飛び出すかもしれないという点を見逃している」と警鐘を鳴らしている。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS

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