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薄煕来被告の無期確定 厳罰で幕引き 基盤固め急ぐ指導部

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薄煕来被告の無期確定 厳罰で幕引き 基盤固め急ぐ指導部

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薄煕来(はく・きらい)氏裁判での焦点=2013年8月25日現在  ≪中国高裁、上訴を棄却≫

 中国で収賄などの罪で失脚し、訴追された元重慶市共産党委員会書記、薄煕来被告(64)の上訴審判決で、山東省高級人民法院(高裁)は10月25日、被告を無期懲役とした1審判決を支持し、薄被告の上訴を退けた。中国は2審制で、これで薄被告の刑が確定した。

 中国の最高指導部入りが有力視された薄被告の一連の事件は、1審判決からわずか1カ月で司法決着が図られた。11月に開かれる党第18期中央委員会第3回総会(3中総会)を控え、習近平指導部は事件の幕引きを急ぐことで、政権の基盤固めを狙ったかたちだ。

 高裁は「1審の犯罪の認定は正確で量刑も妥当だ」と指摘。公判後の高裁の記者会見では、判決文を簡単に説明する内容にとどまった。薄被告は1審で自ら証人を追及して“陰謀”を主張するなど、検察側との全面対決を演じた。上訴審は書面による審理だけで、被告によるこうした法廷戦術は封じられた。

 1審判決は、薄被告の大連市長在任中などの約2045万元(約3億3000万円)に上る収賄と、500万元(約8000万円)の横領を認定。さらに、重慶時代に側近が在成都米総領事館に駆け込んだ事件での職権乱用罪にも問われていた。

 今後は薄被告の党内の後ろ盾とされた周永康・前政治局常務委員(前党中央政法委員会書記)を頂点とする石油利権グループ「石油閥」にも司直の手が伸びるかどうかに焦点が移る。

 ≪厳罰で幕引き 基盤固め急ぐ指導部≫

 中国の元重慶市党委書記、薄煕来被告に対する10月25日の高裁上訴審判決で、中国社会や共産党を大きく揺るがした政治事件は一定の決着をみた。だが、保守層や貧困層の間で薄被告を支持する声は根強く、厳罰で幕を引いた習近平指導部に反発を強める可能性がある。無期懲役と政治権利の終身剥奪が確定してもなお、薄被告が起こした権力闘争の火種はくすぶり続けている。

 中国中央テレビは、山東省済南市の高裁で薄被告が手錠をはめられ、係官2人に両脇を押さえ付けられて判決を聞いた際の映像を放送した。薄被告は1審の判決時と同じように薄笑いを浮かべていた。

 1審公判で、薄被告は事件の背後に“陰謀”があると指摘。いわば権力闘争の犠牲者を最後まで演じきった。文化大革命後、「四人組裁判」で、毛沢東夫人の江青が「政治裁判だ」と批判し、法廷内で嘲笑する言動をとった事例にならったとみる政治学者もいる。

 江青は1981年の死刑判決時に「造反有理、革命無罪」と叫んだが、25日の判決は中央テレビでも一部分しか放映されず、薄被告が法廷内で発言したかどうかは伝えられなかった。

 一方、重慶などでは「共同富裕」の名の下に貧富の格差是正に力を発揮した薄被告を熱烈に支援する住民が多数存在する。保守派(左派)の元政府幹部らも、判決見直しを求める書簡をネットに公開するなど、習指導部の権力基盤を揺るがしかねない動きもみせる。

 香港紙によると、薄被告は、「私は父を倣うことになる」と親族にあてた手紙に書いたという。父親は国共内戦や文革時に投獄されたが、晩年は復権して保守派長老として権力を握った薄一波元副首相。薄被告も父親と同じ北京の「秦城監獄」に収監される見込みだが、最短で服役7年後には重病治療を理由に塀の外に出られる可能性がある。

 薄被告を支持する保守派の台頭など、収監中に党内の権力構造に変化が生じれば、薄被告の“復権”もあながち夢ではなくなる。

 毛沢東時代の手法で重慶の大衆を動かし、党中央に圧力をかけて最高指導部入りの機会までうかがった薄被告の影響力を、習指導部は判決を区切りにどこまで一掃できるのか。11月に開催する共産党の3中総会を経て、権力基盤固めと政権への求心力を高めることが急務となる。(済南=中国山東省 河崎真澄/SANKEI EXPRESS

 ■薄熙来事件 薄被告の元側近が昨年2月、中国四川省成都の米総領事館に駆け込んだのを受け、温家宝首相(当時)は薄被告の責任を問う姿勢を示し、薄被告は重慶市トップを解任された。その後、妻が殺人事件を起こしていたことが公表され、調査が本格化。薄被告は収賄、横領、職権乱用の罪に問われ、今年9月の1審判決で無期懲役を言い渡された。(共同)

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