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中国有力政治家 周永康氏は「拘束」されたのか

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中国有力政治家 周永康氏は「拘束」されたのか

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中国・首都北京市、上海市  【国際情勢分析】

 中国共産党の最高指導部である政治局常務委員会の前メンバーで、有力政治家の周永康(しゅう・えいこう)氏(71)が党の規律検査部門によって事実上拘束され、その失脚が間もなく発表されるとの情報が最近、急増している。北京の多くの共産党筋も同じ証言をする。しかし一方で、「周氏の取り扱いについて党内の意見が割れており、まだ正式に決まっていない」と語る党高官もいる。

 治安、警察部門に大きな影響力を持つ周氏が失脚すれば、政局に激震が走るのは必至。習近平(しゅう・きんぺい)政権は今、重大局面を迎えているようだ。

 薄煕来氏と深い関係

 周永康氏は、江沢民(こう・たくみん)元国家主席(87)が率いる上海閥の重鎮として知られる。国有企業、中国石油のトップを経て政界入りし、大きな利権を持つ石油閥の中心人物だと今でも言われている。公安相を経て2007年に政治局常務委員となり、胡錦濤(こ・きんとう)政権で党内序列9位ながら、警察、検察、司法部門を統轄する責任者である党政法委書記として大きな権力を振るった。

 昨年春に失脚した薄煕来(はく・きらい)・元重慶市トップ(64)と深い関係があることもよく知られている。薄氏の免職が発表された直後の昨年4月から、周氏も事件に巻き込まれ、党規律部門の取り調べの対象となったとの情報が出回った。その後、北京の消息筋の間で、周氏の拘束情報が何度も浮上した。

 12月2日付の台湾紙、聯合(れんごう)報は「周氏が汚職容疑で身柄拘束され、2日中にも正式発表される」と伝えた。その後、カナダを拠点に置く中国語メディアや、米国の情報サイトなども同じような情報を流したが、12月12日になっても、周氏拘束の発表はない。

 クーデター未遂情報も

 周氏の拘束容疑についても複数の情報が出回っている。石油企業の海外進出を巡る巨額な汚職のほか、部下を使って前妻を殺害したことや、2度にわたって習近平国家主席(60)=党総書記=の暗殺を図ったというクーデター未遂の情報まである。

 一連の情報について、共産党高官は「周氏は今、党の規律部門によって一部の行動が制限されている」と明らかにした上で、「経済問題で調べられている。他の容疑は聞いたことがない」と話している。また、「周氏の処遇について党内の意見が割れており、まだ最終結論が出ていない」とも話した。

 この高官によると、習氏が周氏の汚職問題を発表し、刑事事件にしたいとしており、周氏の後ろ盾である江氏の同意をも取り付けているという。しかし、李鵬(り・ほう)元首相(85)、宋平(そう・へい)・元政治局常務委員(96)ら党内の一部の長老は「汚職金額の全額返済と党内処分」で済ますことを主張しており、今でも慎重論は根強くあるという。

 「刑不上常委」

 北京の共産党史の研究者によると、かつての最高実力者、●(=登におおざと)小平(とう・しょうへい)氏(1904~97年)は、党内対立が89年6月の天安門事件を誘発したことの反省から、党内の権力闘争の激化を避けるため、「刑不上常委」という言葉を残した。最高指導部である政治局常務委員経験者の刑事責任は追及しないという意味で、以降、党内の不文律となった。

 今回、習氏が周氏の汚職問題を調査する背景には、周氏の汚職金額が数億元(1元は約17円)にものぼるとされ、大きすぎたことと、資金の流れの証拠が多数あり、事件として捜査しやすい側面があると指摘される。また、治安部門に大きな影響力を持つ実力者である周氏を倒すことで、習氏の求心力を高めたい思惑もある。

 習氏は昨年秋に中国の最高指導者になって以降、「ハエもトラも叩く」と宣言し、大物政治家を含む汚職官僚の摘発を政権の最大のテーマとして掲げた。しかし、約1年過ぎたところで、次官級クラスの官僚を多く摘発したが、有力政治家にはほとんど手を付けられなかった。インターネットで「トラがハエを叩いている」と揶揄されるようになった。

 習政権として、周氏クラスの有力者を摘発することで、反腐敗の成果にしたい思惑がある。しかし、実行すれば、長年の政治的慣行を破ったことになる。他の長老たちの間でも「自分も捜査対象になるのでは…」との不安が広がり、抵抗しているようだ。

 「周永康失脚」の発表は、12月中旬と来年3月という2つの説が今のところは有力だ。党内では今、激しい力比べが展開されているようだ。「ここまでやって結局できなかったら、習政権の求心力は逆に弱まる」と指摘する党関係者もいる。(中国総局 矢板明夫(やいた・あきお)/SANKEI EXPRESS

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