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渦巻く不満 絶望型陳情が急増 中国 党庁舎前で連続爆発

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渦巻く不満 絶望型陳情が急増 中国 党庁舎前で連続爆発

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 中国山西省太原市の共産党省委員会庁舎前で11月6日に発生した連続爆発事件は、党幹部の腐敗や横暴に対し不満を抱く者による犯行の可能性がある。昨年11月に発足した習近平指導部は、富国強兵を目的とするスローガン「中国の夢」を前面に打ち出し、土地収用などで当局とトラブルを抱え、中央政府へ陳情する民衆への取り締まり態勢を強化した。“切り捨てられた”弱者の間で絶望感が広がり、当局への抗議を込めて事件を起こしたとの見方が浮上している。

 北京国際空港で7月下旬に爆発事件を起こしたのは車椅子に乗った陳情者だった。爆竹の火薬を材料に爆弾をつくり爆発させた。先日、天安門前で発生した車両突入事件で、3人の容疑者が車両に積んでいたのは400リットルの市販のガソリンだったとされる。そして今回の連続爆発事件では、手製の小型爆弾からくぎや金属玉などが発見された。

 中国で最近起きたこの種の不満型事件で共通しているのは、身近な材料を利用して犯行に及んでいることだ。容疑者たちが、当局への不満を持つ一般民衆であることを強く印象づけている。

 こうした事件は、習近平政権になってから急増する傾向にある。北京の人権派弁護士は、今回の事件も陳情者によるものである可能性が高いとみる。この弁護士によると、2012年まで続いた胡錦濤政権は、貧富の格差解消などを目指し「和諧(調和のとれた)社会」という政策スローガンを掲げ、政策的に弱者に対し一定の配慮を示した。

 しかし、「中華民族の偉大なる復興」を目指す習政権になってから、政策が転換され、「和諧社会」が死語になりつつあり、陳情者への取り締まりが強化された。特に、陳情者の支援を長年行ってきた北京の大学講師の許志永氏や、投資家の王功権氏ら改革派知識人がこの夏に相次いで逮捕されたことが、陳情者たちに大きな衝撃を与えたという。

 自宅を壊されたのに賠償金がもらえず、9年前から陳情を繰り返している四川省の男性は、産経新聞の電話取材に対し「今の政府は陳情者の弾圧しか考えていない。私たちは完全に追いつめられている。太原市のような事件はこれからも増えるのではないか」と話している。(北京 矢板明夫/SANKEI EXPRESS

 ≪「何度もバン…地震かと思った」≫

 連続爆発事件は、朝の通勤時間帯に起きた。直後の報道によると、現場付近には、爆発物で飛び散った鋼鉄玉やくぎで窓ガラスが破損した車両が何台もあったほか、路上には血痕が残り、爆発の被害を生々しく物語っていたという。

 「爆竹よりも大きな音だった。家の椅子やテーブルもぐらぐら揺れた」「バンという音が何度も聞こえた。地震かと思ったよ」。付近の住民や通行人らは中国メディアにこう語った。

 現場となった山西省共産党委員会庁舎前は、目抜き通りに面した市の中心部。大きな爆音に続き、白煙が立ち上がった付近は、逃げ惑う通行人らで混乱し、道路は午前10時半まで封鎖された。

 近くを流れる黄河支流の汾河にかかる迎沢大橋を走行中だったドライバーは「大きな爆発音が聞こえ、橋を渡り切ると大量の煙が見えた。庁舎の入り口にさしかかると、ミニバンが煙を上げて爆発し、破片が飛び散っているのが見えた」と語った。清掃員の女性は「けがをした男性を見た。かばんが落ちていて、付近は血まみれだった」と述べた。(太原 河崎真澄/SANKEI EXPRESS

 ≪圧力鍋爆弾を使用か ボストンテロと類似≫

 今回の連続爆発事件では、日用品などで作ることのできる「圧力鍋爆弾」が使用されたのではないかとの見方が浮上している。

 圧力鍋爆弾は、原料に農薬などを利用することで、素人でも殺傷力の高い爆発物を製造できるとされる。ことし4月の米ボストン連続爆破テロでも使用された。

 太原の爆発事件直後の写真には、白煙が立ち上る様子が写り、現場からはくぎや金属玉が見つかった。使用された部品や現場の様子から、ボストンの事例と類似性が極めて高いといえる。

 圧力鍋爆弾は、くぎや金属玉を中に入れることで殺傷力が高まる。今回の事件も当初、当局が「小型の爆発物による爆発」と伝えたにもかかわらず、死者を出す被害が出たのはこうした仕掛けが原因とみられる。

 中国では、土地収用に絡む抗議活動などで、農機具で武装した住民が当局者を襲撃したり、車で役所の入り口に突っ込んだりする例はある。しかし、圧力鍋爆弾の使用が疑われるケースは珍しい。事件の犯人像や動機は不明だが、治安当局も新たな対応を迫られそうだ。(北京 共同/SANKEI EXPRESS

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