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【中国防空識別圏】中国の制空権阻止 日米が監視強化 米爆撃機、防空識別圏を事前通報せずに飛行

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【中国防空識別圏】中国の制空権阻止 日米が監視強化 米爆撃機、防空識別圏を事前通報せずに飛行

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 日米両政府は11月27日までに、中国が東シナ海上空に防空識別圏を設定したことへの対処方針として、中国軍機に対する早期警戒・監視態勢での連携と、情報共有の強化を軸に検討に入った。26日(米東部時間25日)には、米空軍のB52爆撃機2機が防空識別圏を飛行し、中国側の対処行動を探った。ジョー・バイデン米副大統領(71)も12月2日から日本を訪問し対応策などを詰める。

 米政府筋によると、検討の主眼は、不測の事態を招くリスクの低減と同時に、中国が「制空権」を握る事態を阻止することにある。

 具体的には(1)日米双方の早期警戒管制機(AWACS)、早期警戒機E2Cなどの運用を強化(2)警戒・監視活動区域などを分担(3)偵察機などによって得られた情報の共有を強化(4)不測の事態が生じた場合の連携と役割を分担する-などが検討対象となっている。

 AWACSなどによる警戒・監視活動を強化するのは、沖縄本島や久米島、宮古島の地上固定レーダーでは中国軍機の捕捉が十分ではないためだ。AWACSなどは広範囲の捕捉能力を有している。

 尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域では、海上保安庁の巡視船が、海上自衛隊と中国海軍との直接衝突を回避する“緩衝材”となっている。だが、空域ではそれがなく、戦闘機などの飛行速度も速いため、早期対処には警戒・監視活動の強化が最重要との判断がある。こうした能力で中国は日米に大きく劣っている。

 一方、米国防総省によると、米軍のB52爆撃機2機は中国の防空識別圏内を事前通報なしに飛行した。中国側から2機への呼びかけや、戦闘機の緊急発進(スクランブル)はなかった。

 2機はグアムのアンダーセン空軍基地を離陸し、防空識別圏内に入った。尖閣諸島の上空周辺を飛行し、圏内での飛行時間は1時間未満。爆弾などは搭載しておらず、護衛機も伴っていなかった。国防総省は、以前から予定されていた飛行訓練だとしている。

 米政府は、(1)防空識別圏を認めない(2)飛行経路の事前通報や無線の開放など、中国が要求する措置には応じない(3)米国の軍事作戦遂行に一切変更はない-との立場を明確にしている。

 爆撃機の飛行は、米国の姿勢と日米同盟の強固さを中国側に誇示し、強く牽制(けんせい)するものだ。中国軍の対処行動を見極める最初のテストでもあった。(ワシントン 青木伸行/SANKEI EXPRESS

 ≪中国、米に抗議示さず≫

 中国国防省の耿雁生(こう・がんせい)報道官は11月27日、米軍のB52爆撃機が中国の防空識別圏に入ったことについて「米軍の飛行機は26日11時から同13時22分まで防空識別圏内に入り、釣魚島(尖閣諸島の中国名)の東約200キロ付近で活動した。中国軍はすべての航程を監視した」と表明。「中国は防空識別圏内のいかなる航空機の活動にも識別を行っており、関連空域を有効にコントロールしている」と話した。

 外務省の秦剛報道官も27日、「米軍爆撃機は中国の脅威か」との質問に対し、「具体的な状況に応じ、中国軍は規制に従って適切に対応する」と述べた。

 両報道官はこの日、米国に抗議の意を示さなかった。中国の国際問題専門家は「中国が東シナ海の防空識別圏を設定したのは日本への領土主張が目的で、米国とは対立したくないのが本音だ」と分析している。(北京 矢板明夫/SANKEI EXPRESS

 ≪ケネディ大使「一方的な行動」と批判≫

 キャロライン・ケネディ駐日米大使(56)は11月27日、東京都内で就任後初めて講演し、中国が尖閣諸島を含む東シナ海上空に設定した防空識別圏は「東シナ海の安全を損ね、現状を変更しようとする試みだ」と述べ、中国の「一方的な行動」が緊張を高めていると批判した。

 ケネディ大使は講演で、日本は対中外交などで「この1年、多大な自制を示してきた」と称賛し、周辺国との意思の疎通を深め、今後も慎重な対応をみせてほしいと注文をつけた。

 講演は非営利団体の日米協会などが主催した。(SANKEI EXPRESS

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