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【中国製ギョーザ中毒事件】被告の男に無期判決 「食の安全」厳格対処 内外に示す
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中国製ギョーザ中毒事件=2007年12月28日~2014年1月20日 日本で2008年1月に発覚した中国製ギョーザ中毒事件で、河北省石家荘市の中級人民法院(地裁)は1月20日、危険物質混入罪に問われた製造元食品会社「天洋食品」の元臨時従業員、呂月庭被告(39)に対し、無期懲役と政治権利の終身剥奪の判決を言い渡した。
20日午前9時から開かれた判決公判で、裁判官は「計画的で、繰り返し投毒を行い、不特定多数の人間に健康被害を与えた。極めて悪質で、情状酌量の余地はない」と判決理由を述べた。中国の刑法で危険物質混入罪は10年以上または無期懲役、最高で死刑と規定されている。被告側は待遇改善が目的だったなどとして寛大な判決を求めていた。
≪「食の安全」厳格対処 内外に示す≫
食品への農薬混入で日本社会に衝撃を与えた中国製ギョーザ中毒事件は、発覚から6年を経て司法の判断が下された。待遇格差への恨みから犯行に及んだ製造元食品会社「天洋食品」の元臨時従業員、呂月庭被告(39)に対し、1月20日の判決は「無期懲役」を選択した。関係者の予想を上回る重刑は、深刻化する「食の安全」に対する厳しい姿勢と、日中関係の悪化に左右されない「司法の公正」を内外に示す狙いとみられる。
河北省石家荘市の中級人民法院(地裁)の約70人分の傍聴席は、日本大使館員や被告の親族らしい人々でほぼ満席。裁判長が呂被告の犯行を「計画的で悪質」と断罪し、情状酌量を求める弁護側の主張を退ける中、黄色い収監者用の被服に丸刈り姿の呂被告は、始終うつむいたまま約20分の公判を終えた。
中国当局は10年8月に呂被告を危険物質混入罪で起訴。約3年後の昨年7月になって初公判が開かれた。検察側の冒頭陳述などによると、呂被告は正社員との賃金格差に不満を募らせ、有機リン系殺虫剤メタミドホスを注射器で製品に混入した。呂被告は「私がやりました。罪を認めます。被害者に申し訳ない」と謝罪している。
呂被告の逮捕から起訴、判決にいたる手続きは3年半と長期に及んだ。また、起訴事実を全面的に認めていたにも関わらず、初公判から判決公判まで約半年を要した。中国の刑事訴訟法では、裁判所は原則、事案の受理から判決まで「6カ月以内」と規定されている。
北京の法曹専門家は「今回のように被告が容疑を全面的に認めた単独犯行で、明確な証拠がある場合は、起訴から2カ月以内で判決が一般的だ」と指摘。司法手続きの長期化は、中国当局が日中関係と国内世論の反応を見比べて、判決のタイミングを慎重にはかったことをうかがわせる。
また、日中間の政治情勢が、量刑にどう影響するかも関心を集めていた。呂被告の初公判が開かれた昨年(2013年)7月、事件を担当した検察官は、中国の英字紙チャイナ・デーリーの取材に応じ「懲役10年の判決」と見通しを述べていた。
しかし、昨年(2013年)12月の安倍晋三首相(59)による靖国神社参拝で、中国の国内世論がさらに反日に傾き、呂被告を「民族英雄」と呼ぶ書き込みもネット上に流れた。対日関係者は「被告を厳罰にしないと、模倣犯が出ることを当局が警戒したかもしれない」と分析。その上で「毒ギョーザ事件以降、中国で食の安全が脅かされ、国際社会でイメージが低下した。政府は厳しい姿勢を国内外に示す必要があった」と話している。(中国河北省石家荘 矢板明夫/SANKEI EXPRESS)
2007年
12月28日 千葉市の家族2人が冷凍ギョーザで中毒症状
2008年
1月5日 兵庫県高砂市の家族3人が中毒症状
1月22日 千葉県市川市の家族5人が中毒症状
1月30日 千葉、兵庫両県警が初めて事件を公表
2月16日 日本の警察庁が検出された殺虫剤メタミドホスは日本以外で製造と断定
2月21日 警察庁は「日本国内で混入した可能性は低い」と指摘
2月28日 中国公安省が中国国内での混入は「可能性が極めて低い」と否定
6月中旬 中国国内でギョーザ中毒事件発生
2010年
3月26日 中国公安省が天洋食品の元臨時従業員、呂月庭容疑者を拘束したと発表
8月10日 中国の検察当局が危険物質混入罪で呂容疑者を起訴
2013年
7月30日 中国で初公判が開かれ、即日結審
2014年
1月20日 呂被告に無期懲役判決