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習政権 穏健派も弾圧標的 中国「新公民運動」指導者 騒乱罪で初公判

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習政権 穏健派も弾圧標的 中国「新公民運動」指導者 騒乱罪で初公判

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中国の主要都市  中国の憲法を根拠に人権擁護などを訴える「新公民運動」の中心人物として知られ、公共秩序騒乱罪に問われている人権活動家、許志永氏(40)の初公判が1月22日、北京第一中級人民法院(地裁)で開かれた。許氏の弁護士によると、許氏は「自分が裁かれる法的根拠はない」と主張、それ以外は黙秘を続けて抗議の意思を示した。共産党一党独裁への批判を避けながら活動してきた「穏健派」の許氏らに対する締め付けは、習近平指導部による知識人や人権活動への弾圧強化を示すものとして国内外に憂慮が広がっている。

 支持者続々と拘束

 初公判が開かれた地裁周辺では、早朝から100人を超える警官が配置されるなど厳戒態勢が敷かれた。関係者によると、許氏の支持者が当局に抗議するため地裁に向かおうとしたが、自宅付近や地裁周辺などで次々と拘束された。また、許氏の無罪を主張する横断幕を掲げようとする支持者らも取り押さえられ、バスに押し込まれた。

 起訴状などによると、許氏は2012年から13年にかけて、出稼ぎ労働者の子供に対する教育の機会均等や、政府高官の資産公開などを求める「新公民運動」を展開。仲間と街頭で横断幕を掲げたりビラをまいたりしたことが公共秩序騒乱罪に当たるとして、昨年(2013年)7月に拘束された。

 許氏と一緒に運動を推進し、同じ罪で起訴された数人の活動家に対する初公判もこの日、別の裁判所で行われたが、関係者によるといずれも無罪を主張したという。

 公判は即日結審し、近く判決が言い渡される見通し。北京の司法関係者によると、許氏は最高で懲役5年と定められている公共秩序騒乱罪で有罪判決が下される可能性が高いという。

 「人権悪化の証拠」

 法学者でもある許氏は、北京市内の大学で講師を務めながら、陳情者支援などの社会活動に積極的に参加。北京市海淀区の人民代表大会代表(区議員)も2期務めて体制内から改革を訴えるなど、中国共産党の一党独裁そのものに反対する、ノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏(58)ら反体制活動家らとは一線を画してきた。

 しかし12年末に発足した習近平体制は、知識人に対する締め付けを強化し、許氏とその仲間ら少なくとも20人を逮捕。許氏らの活動を経済的に支援する企業家も拘束した。許氏をよく知る改革派知識人は「政府に反対しない許氏のような穏健な知識人まで裁かれるようになった。中国の人権状況が以前と比べて悪化した証拠だ」と話している。

 許氏の初公判は国内外から高い関心が寄せられた。公判を取材するため多くの海外メディア関係者が集まったが、当局に排除された。北京の欧州連合(EU)代表部関係者も「人権問題に関わる」として裁判の傍聴を求めたが、認められなかったという。中国外務省は「(欧米諸国などは)中国の内部の事情に干渉する必要はない」と述べ、国際社会の批判に反発している。(SANKEI EXPRESS

 ■新公民運動 中国憲法と法律が規定する公民の権利擁護を通じ、社会問題の解決を目指す運動。中国の著名な法学者、許志永氏が提唱した。出稼ぎ労働者の子どもの教育の権利保護や、官僚の資産公開などを求めている。運動では中国共産党の一党独裁に対する批判はせず、ノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏が起草し、独裁体制の廃止を要求した「〇八憲章」とは異なる。運動が全国的な広がりを持ち、体制の安定への脅威と受け止めた中国当局が昨年、大規模な取り締まりに乗り出し、許氏も昨年7月に拘束された。

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