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夢見る人の滑稽さが魅力的に見えれば 舞台「もっと泣いてよフラッパー」 松たか子さんインタビュー

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夢見る人の滑稽さが魅力的に見えれば 舞台「もっと泣いてよフラッパー」 松たか子さんインタビュー

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おしゃれなフラッパーたちの衣装も見どころ。男装も含め、6回着替える。「大変だけれど楽しい」と話す、女優の松たか子さん(寺河内奈美撮影)  24年前、中学生だった松たか子(36)は「なぜ、もっと泣いてよ、なの? フラッパーってなんのこと?」と想像を巡らせながら、ある舞台に見入ったという。「なんだか分からないけれど、ワクワクしたり、切なく思う瞬間があったり。芝居のこんなところが好きなんだよなあって、教えてくれた舞台でした」

 それは串田和美(71)が77年に書き、初演された音楽劇「もっと泣いてよフラッパー」。人々が夢に浮かれて生きた1920年代の米シカゴの享楽的な空気感を描き、92年までに、スピンオフの「銀色の陰謀編」を含み6度上演を重ねた人気作だ。串田が初代芸術監督を務めたBunkamuraシアターコクーンが開場25周年を迎え、2月8日から、コクーンで22年ぶりに上演される。

 にぎやかだけど切ない瞬間

 松が「何だろう」と思ったフラッパーとは、スコット・フィッツジェラルドの小説に出てくるような、20年代に米で最先端だった女性たち。ショートヘアでたばこを吹かし、窮屈なコルセットや旧式の慣習から自らを解放し、自由を謳歌した。松が演じる踊り子ジルは、そんなフラッパーの一人だ。スターを夢見て田舎町から“まずまず都会”のシカゴにやってきた。

 「本当はニューヨークに行きたいのかも。すごいダンサーだと自負するのに、実際はチョイ役で、でもいいのよ、と一生懸命踊ります。はたから見れば、あれ?って思うような、夢見る人の滑稽さや、どこかちぐはぐな姿が、魅力的に見えればいいなと思います」

 ジルを取り巻く面々は、街にのさばるギャングたち(松尾スズキ、串田和美ら)や、いかさまボクサー(大東駿介)とひと癖ある面々。華やかに舞う踊り子も、女狐よろしく男に貢がせるものもいれば、逆に貢ぎだまされるものもいる。やがて、それぞれ恋や夢に目覚め、破れて、それでも「まあ、いいか」とたくましく人生を歩んでいく。

 胸に刺さるメッセージがあるわけではない。「いい意味で人々がいいかげんに生きた時代の、にぎやかだけれど、何となく切ない瞬間が訪れるような…ちょっと懐かしい空気を表現できたら」と言う。

 舞台で夫婦初共演

 人間模様を味わい深く描く串田作品の稽古場では、演劇的な常識にとらわれず、これまでの経験や、見てきたものなど、丸ごと試されるような感じがある。力の抜けた、けだるいフラッパーの雰囲気を出すのも、意外と難しい。個性的な共演者たちが試行錯誤する姿にも刺激を受け「今はいろいろ試してみよう、いろいろ失敗してみよう、ってパワーをもらっています」「うまくやろうという欲は捨てて…」と話す横顔が、不器用だけれど生き生きと輝くフラッパーたちに重なる。

 「ジャズ・エイジ」と呼ばれた時代が舞台だけあり、生バンドによる約30曲が全編を彩る。大東や串田、新聞記者役の石丸幹二ら俳優も劇中のバンド「オーケストラ“ラ・リベルテ”」で管楽器を鳴らす。バンドを率いる音楽監督は、松の夫・佐橋佳幸(52)とDr.KyOn(56)のユニット「ダージリン」。舞台で夫婦初共演となる。

 「稽古段階を見られるのはとても複雑でしたが、お互いやることだらけで、大変忙しいので」と本番に向け、それどころではない、という感じのようだ。(文:津川綾子/撮影:寺河内美奈/SANKEI EXPRESS

 ■まつ・たかこ 1977年6月生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優、松本幸四郎(71)の次女。93年、歌舞伎座「人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)」で初舞台。舞台や映画、テレビ、歌と幅広く活躍。最新映画「小さいおうち」(山田洋次監督)が公開中。ミュージシャンの佐橋佳幸とは2007年に結婚。串田和美演出の舞台は今回で6回目となる。

 【ガイド】

 2月8日~3月2日 Bunkamuraシアターコクーン(東京)。Bunkamura (電)03・3477・3244。3月7~9日 まつもと市民芸術館(長野県松本市)。劇場 (電)0263・33・3800。3月14~16日 シアターBRAVA!(大阪)キョードーインフォメーション (電)06・7732・8888

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