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新春インタビュー 「仕事とは何か」見つめ直す(1) 映画「ジャッジ!」 妻夫木聡さん 北川景子さん
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業界を知り尽くした希代のCMクリエーター、永井聡と澤本嘉光が戦いの場を映画に移し、それぞれ監督と脚本家として駆け出し広告マンの奮闘を描いたラブコメディー「ジャッジ!」(1月11日公開)。ダブル主演の妻夫木(つまぶき)聡(33)と北川景子(27)には、「自分にとって仕事とは何か?」という原点を見つめ直す契機となる作品となったようだ。
広告代理店のCMクリエーター。その字面からは、おしゃれで知的、しかも高給といった、華やかで洗練されたイメージが少しのやっかみとないまぜになって次々と浮かんでくる。ところが妻夫木が本作で扮したのはその対極にあるようなキャラクター。情熱だけは人一倍だが、ダメでドジでのろまといった、その昔どこかのフライトアテンダント養成所で聞いたような愚鈍な男なのだ。一方、北川の役どころは同僚のCMクリエーター。何をやらせてもできる女だが、物おじせず思ったことは何でも口にしてしまうきつい性格が玉にきず。大好きな競馬に興じる様は、もはや「男らしい」と表現してもいいほどの迫力だ。
それにしても、妻夫木がここまで二の線を崩すのは珍しい。恐る恐る感想をぶつけてみると、「そうですかねえ。正直に言えば、撮影が楽しかったからドライブがかかったんですよ。台本を見たときに『あまり泣ける映画じゃないな』とは思いました。でも完成品を見たら意外と感動しちゃったんですよね」。笑顔を浮かべ、あっけらかんと答えた妻夫木の回答はもちろんジョークだ。北川が「役者ばかだよね」と評するほど、妻夫木が披露してみせた演技は、緻密に計算しつくされ、演じる役をすっかり自分のものとして臨んだ結果なのだ。
「僕は駆け出しの頃から、実践していることがあります。台本を読みまくるということ。最低25回と決めていました。台本を読み込むと、自分の役がどんな人物なのか客観的に見られるようになる。違う目線から違う芝居がふと見えてくることがあるんですよ」。妻夫木は自らの役作りの基本線を教えてくれた。「クランクインした後は台本を持たない」と、さも得意顔で言う俳優もいるが、妻夫木は「僕は撮影現場でも、どこでもかしこでも、台本を読めるところならいつも読んでいますね。駆け出しの頃は台本を100回は読んでいたでしょう」と振り返った。
自分の演技に後悔を残したくないというのが大きな理由だ。それでも初めの頃は完成品を見ると「こうすればよかった」と思うことばかりだったという。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:瀧誠四郎/SANKEI EXPRESS)