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立場の違いは恋愛のメタファー 映画「サカサマのパテマ」 吉浦康裕監督インタビュー

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立場の違いは恋愛のメタファー 映画「サカサマのパテマ」 吉浦康裕監督インタビュー

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「少年がサカサマの少女をどう理解していくのか、じっくりと見てほしい」と語る吉浦康裕監督(高橋天地撮影)  アニメーションの世界を牽引する若手の筆頭格として映画ファンからも注目される吉浦康裕監督(33)は、6歳まで北海道で育ったそうだ。通っていた幼稚園のコンセプトは「野山で自由に遊ぶ」という実に個性的なもので、仲良しの友達とスキーや沢下りに挑戦する楽しい毎日だった。吉浦にはその頃からずっと気になっていた不思議な風景がある。「お天気の日に広々とした北海道の空を見上げると、空は高いところから見下ろしている雲海のように見えました。地面に立っている自分は、たまたま天井に足が張り付いているだけではないのだろうか」

 幼少期の疑問を基に

 幼き日にふと感じた疑問がベースとなり、30年近い時を経て、吉浦自らが原作、監督、脚本を務めた劇場用の長編アニメーション作品「サカサマのパテマ」として実を結んだ。近く英仏での劇場公開も決まり、彼の世界観は着実に世界へと浸透し始めている。

 どこまでも坑道が続く、狭く暗い地底世界の集落に暮らすお姫様パテマ(声・藤井ゆきよ)は、世界の先はどうなっているのか興味津々で、楽しみといえば、坑道の探検だった。そんなある日、パテマは集落の掟で立ち入りが禁じられている危険区域に出入りしていると、不測の事態に遭遇、底が見えない穴に落ち、闇の彼方へ落下してしまう。一方、空を忌み嫌う世界アイガ。いつものように空を眺めて過ごす風変わりな少年エイジは、地底から“降ってきた”パテマと出会う。

 幅広い人に観賞を

 アニメーションに限らず、実写映画でも重力の向きが場所によって変わる設定はまま見かけるが、吉浦監督はパテマを「永遠にサカサマに生きることを運命づけられた存在」と規定して、一緒にいる人物と物の見方や感じ方を分かち合えなくすることで、一線を画した。例えばエイジが何も考えずに地面に立っていたとしても、パテマにすれば足場が底抜けの空なわけだから、気持ちとしては「落ちてしまうのではないか」と怖くて仕方ないといった具合。「2人が相互の立場の違いを次第に理解し、受け入れていく過程をわかりやすく描けば、サカサマの状況は恋愛映画の立派なメタファーとして使えますよね」

 先の東京国際映画祭では初めてグリーンカーペットを歩いた。吉浦には「アニメが好きな人も、そうではない人にも作品を幅広い人に見てもらいたい」との強い思いがあり、広く映画ファンが集まる場所で作品を紹介する機会を得たことで、「実はすごいうれしいことで、僕がこの作品を作った意味がそこにあるんです」。公開中。(高橋天地(たかくに)、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■よしうら・やすひろ 1980年4月3日、北海道生まれ。九州芸術工科大(当時)で芸術工学を専攻。卒業後、フリーでショートアニメーションを制作。2006年、初のDVD作品「ペイル・コクーン」を発売。08年8月~09年9月、原作・脚本・監督を務めたオリジナルシリーズ「イヴの時間」(全6話)をWEB配信。東京アニメアワードOVA部門優秀賞に輝く。

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