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【クレモンティーヌのパリ便り】避けて通れない介護問題

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【クレモンティーヌのパリ便り】避けて通れない介護問題

更新

 皆さん、お元気ですか? こちらは先週末に夏時間も終わり、いよいよ本格的な冬が始まろうとしています。

 受け入れ家族制度

 先日久しぶりにプロモーションのために日本に行き、たくさんの女性誌のインタビューを受けました。中には10年や20年ぶりにお会いするジャーナリストの方もいらっしゃり、同世代の私たちは介護や子育ての話題で、本音で濃いお話をする事ができました。特に私たち世代の女性には避けては通れない「介護」について深く話し合いました。

 今日は、フランスの「介護」の現状についてお話ししたいと思います。

 私自身3年前に母を、2年前に父を亡くしました。わが家では母の長い入院介護、父の在宅介護を家族一丸となって行いました。自分を育ててくれた両親の面倒をみることは子供として当然の義務だと思います。しかし残念ながら、1960年代から核家族化が進むフランスでは75歳以上の男性の約2割、女性の約5割が独居高齢者であり、家族が介護をする確率はかなり低いのが現実です。老夫婦だけで暮らす、いわゆる「老老介護」の問題も多く見られます。

 記憶に新しい2003年の猛暑時、1万5000人もの高齢者が命を落とすという惨事により、国も真剣に老人介護のシステムに目を向け始め、要介護者への擁護を目的に新しい介護用公庫も設立されました。まだまだ改善点は多いですが、高齢者の介護問題はフランスでも日本でも避けて通る事はできない問題だと思います。

 フランスには「受け入れ家族制度」という、県から認可を受けた高齢者及び障害者を受け入れる一般家庭(有償)が存在します。双方の同意と県による監視の元で交わす正式な契約ですから肯定的に捉え発展させていくべきシステムのように思います。このシステムを利用(受け入れ家族)している知り合いがいますが、大変な仕事ですがやりがいもあるのよ!と彼女は明るく笑います。

 負担を少なく

 父の場合は「在宅ケア」システムを利用しました。主治医が決めた時間に看護師さんが自宅に来て必要な処置を行ってくれます。このシステムのお陰で私たち家族は安心して父を自宅で介護できました。晴れた日には、父を車椅子にのせて外に出て、カフェのテラスで楽しい時間を過ごした事も忘れられない思い出です。

 母が何カ月もの間入院生活を送っていた時はどんなに忙しくても一日も欠かさず病院に通いました。主治医や担当看護師さんと毎日話し、母にとって一番いい治療法について何度も話し合いました。患者や患者の家族にわかるように話ができる主治医を探す事が非常に大切な事だと思います。

 生きる希望を持ってもらうために、母の好きな食べ物を持参し、たわいない事を話す病室で過ごすアペリティフの時間を何よりも大切にしました。亡くなる前日まで、1日1杯彼女の好きなサンセールの白ワインを飲みながら過ごすこの時間は続きました。

 今はパートナーの101歳になる祖母の介護を家族でしています。彼女はパリ郊外で1人暮らしをしていますが、介護システムのお陰で経済的にも精神的にも過剰に負担にならず介護ができています。高齢者政策は今後最も真剣に取り組んでいかなければならない社会問題の一つであることは間違いないのですから、介護する側の負担を少なくできるシステムを構築していく事が大切だと思います。(フランス人アーティスト クレモンティーヌ/SANKEI EXPRESS

 ■Clementine パリ生まれ。レコードコレクターの父親の影響でジャズに囲まれて育つ。1988年に歌手デビューし、92年から日本での活動が本格化。2010年、フランス語でカバーしたアニメソング「天才バカボン」がCM曲に起用され、話題を集めた。2013(平成25)年12月22日に横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズ(予約、問い合わせ(電)045・411・1126)で、12月25日に、ハイアットリージェンシー大阪((電)06・6614・7810)、12月26日には名古屋ブルーノート((電)052・961・6311)でライブを行う。possion-h.com/cle/

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