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小さな役でも、感謝の気持ちを持って出演 俳優・タレント 武田鉄矢さんインタビュー

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小さな役でも、感謝の気持ちを持って出演 俳優・タレント 武田鉄矢さんインタビュー

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 合格発表の掲示板を恐る恐る見上げる受験生の気持ちと似たところがあるのかもしれない。レンタルビデオ店で自身の出演作の貸し出し状況を確認する瞬間は、数々の大ヒットドラマに携わってきた武田鉄矢(64)がいまなお心をときめかせるひとときだ。「出演したテレビドラマのDVDが貸し出し中になっていると、僕はうれしいんですよ。当時の視聴者のうちの0.000何%の人たちが今でもいてくれて、自分の作品が陳列棚で生きているっていう気がするんですよ」

 中国版「101回目のプロポーズ」

 そんな武田のもとへ、トレンディードラマ全盛期の1991年に浅野温子(52)との共演で大ヒットしたテレビドラマ「101回目のプロポーズ」(野島伸司脚本、フジテレビ系)を中国で映画化するので出演してくれないかという話が舞い込んだ。テレビドラマでは、美貌のチェリスト矢吹薫(浅野)と、鈍くさい男、星野達郎(武田)が織り成す恋模様が切なく描かれた。婚約者を失い、再び人を愛することにおびえる薫に、達郎がダンプカーの前に飛び出し言い放った「僕は死にません」というせりふは、当時の流行語にもなった。

 日本の国民的大ヒットドラマは、放送されるやたちまち中国や台湾の恋する男女の心もとらえた。映画化の背景には、けんかをすると軟弱なのは男性で、涙すら見せずわが道を貫き通すのは女性の方とされる現代中国の若者たちの気質に、ドラマのストーリーラインがうまくフィットしたということもあったようだ。

 武田は二つ返事で出演の打診に応じた。「どんなに小さな役でも、感謝の気持ちを持って、ぜひ出演させてもらおうと思いましたね。20年以上も前のテレビドラマを映画として『また作ってみよう』という中国人スタッフたちの情熱がありがたかったし、僕はうれしかったんですよ」。こうして完成したのが現在公開中の「101回目のプロポーズ SAY YES」(日中合作、レスト・チェン監督)だ。中国では興行収入30億円を超える大ヒットを記録した。

 ヒロインを演じるのは台湾の人気女優、リン・チーリン(38)で、役どころも浅野と同じく美貌のチェリストだ。物語の骨格はテレビドラマ版と同じで、身長が低く、不器用だが、愛に満ちあふれた内装会社の親方、ホアン・ダー(ホアン・ボー)と、イエ(チーリン)の恋の駆け引きが上海を舞台に展開される。

 成就するのは「二目ぼれ」?

 武田の役どころは、おなじみの“不死身の”達郎。その後晴れて薫の夫となった達郎が妻の弟子であるイエを訪ねるという設定だ。チェン監督は、達郎がホアン、イエと3人で会食するささやかなシーンを用意した。撮影前、「アドリブで2人にこんな話をしてみたいという提案はありますか」と相談を持ちかけられた武田は、「愛というものについて、ぼんやりとですが、2人に話をしたい。見ていて楽しくなるシーンになればと考えています」と答えた。

 作中で武田は、悩める中学生たちを優しく導くおはこの教師役をほうふつさせる独特の語り口で、なかなか凝った説明をしてみせた。達郎は、薫から預かってきたプレゼントのスカーフをイエに手渡し、ホアンとイエで協力して広げたスカーフをきれいにたたんでいくよう促す。「スカーフを持って近づいたり、離れたり。広げたスカーフは愛そのものだし、2人できれいにたたむ作業も愛を意味する行為なんですよ」。ベッタリと肩を寄せ合うだけの関係では、むしろパートナーへの信頼感は醸成されない。そんなものは愛ではない-。武田は熱っぽく語る。

 女性が恋愛対象外の男性に心を許すのはどんな場合だろう。数多の失恋を経験してきたと豪語する武田の持論はこうだ。「お互いよく知らないのに、ずっと昔に会った気がすると感じられるときではないでしょうか」。武田が今の奥さんに感じたインスピレーションらしい。だから、恋が成就するか、結婚にまで発展するかを判断する場合、一目ぼれではなく、「二目ぼれ」の方が好ましいとも。「なぜその人が魅力的なのかとうとうと語れてしまったら、実はやめておいた方がいいんです。バブル時代に収入、身長、学歴の高い『3高男性』がもてはやされましたが、そんなものだけを求めている女性は絶対に結婚できません」(文:高橋天地(たかくに)/撮影:瀧誠四郎/SANKEI EXPRESS

 ■たけだ・てつや 1949年4月11日、福岡市生まれ。72年にフォークグループ「海援隊」としてデビュー。77年、初の映画出演作「幸せの黄色いハンカチ」(山田洋次監督)で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞受賞。その後も、テレビ、執筆などマルチに活動。主なテレビドラマの出演作は「3年B組金八先生」シリーズ(1979~2011年)など。代表曲は「贈る言葉」。

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