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メンバーの自覚が生んだ力強い作風 Nothing’s Carved In Stone

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メンバーの自覚が生んだ力強い作風 Nothing’s Carved In Stone

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バンド「ナッシングス_カーブド_イン_ストーン」(提供写真)  バンド名は「その石には何も刻まれていない」という意味だ。まるで過去の経歴や評価を返上し、ゼロから始めていくような意思を感じるバンド名である。ELLEGARDENのギタリスト、生形真一がストレイテナーのベーシスト、日向秀和を誘ってセッションをしたところから始まり、日向が別プロジェクトで一緒に活動していた海外での活動経験もあるドラマーの大喜多崇規に声をかけ、最後にネットでアーティストサイトを検索してボーカル、村松拓を探し当てたという。

 オールスターバンド、と言っても過言ではない。特に生形は、前バンド時代は幕張メッセに3万人を集めライブを敢行した経験もある。日向は日本のロックシーンを代表する人気ベーシストで、シグニチャー(本人の名を冠した)モデルのベースも発売されているほどだ。

 和風の言葉で変化

 デジタルな音とロックの爆発力、さらに英語詞、という洋楽のような作風が持ち味だが、最新作「ツバメクリムゾン」は、このバンドの違った側面を感じる作品だ。ギターの生形は「このバンドの特徴として打ち込みを入れるという方向性のようなものがあったが、今回はバンドの楽器の音だけで作ってみた」と言う。

 さらにツバメという和風の言葉を選ぶことが、今までのイメージにこだわらない、というスタンスをより推し進めているように感じる。強いロックサウンドが鳴っているにもかかわらず、歌詞が容易に聞き取れるところが「邦楽っぽい」のだ。それも彼らの曲の今までの印象とは違う。

 こういった変化は、ボーカルで歌詞を担当する村松の、バンドを引っ張っていくという自覚や主張が少なからず影響しているのではないか。過去の経歴や既出のプロフィル上で言うと生形と日向が前に出がちだが、思い切った日本語詞の言葉選び、ボーカリストとしての歌の存在感が以前に比べ格段にこのバンドを特徴的に色づけている。いい意味で彼の自己主張がこのバンドに欠かせないものとして楽曲に反映されているのだ。

 新作の音を聴くと、4人の音がブレンドしつつもそれぞれが曲をリードするように前に出てくる。切磋琢磨してきた時間と作品の積み重ね、おのおのの自覚が、このバンドを名実ともに今のロックシーンのオールスターメンバーと呼ぶにふさわしいものにしている。(音楽評論家 藤田琢己/SANKEI EXPRESS

 ■ナッシングス カーブド イン ストーン 生形真一の所属バンドELLEGARDENが活動休止になったことをきっかけに現在ストレイテナーのベーシスト、日向秀和に声をかけて結成。その後ドラム大喜多崇規、さらにインターネットで探しライブを見て参加をオファーしたボーカルの村松拓を加え、2008年に始動。09年にファーストアルバム、12年には4枚目のアルバムをメジャーレーベルからリリース。新作シングル「ツバメクリムゾン」を2013年12月18日に発売した。

 ■ふじた・たくみ 1976年、東京都生まれ。ラジオ、テレビの音楽番組を中心に活動する傍ら、年間150本ほどライブに通う。現場主義の視点で音楽を紹介し続けている。

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