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自分にないものを欲しくなるのは当たり前 映画「四十九日のレシピ」 永作博美さんインタビュー

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自分にないものを欲しくなるのは当たり前 映画「四十九日のレシピ」 永作博美さんインタビュー

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 6月に第2子となる長女を出産したばかり。この3年間、じっくり腰を据えて子供と向き合う日々を送ってきた永作(ながさく)博美(43)が2年ぶりの主演作「四十九日のレシピ」(タナダユキ監督)で演じたのは不妊に悩むアラフォーの主婦。苦悩の末、自分らしい生き方にたどりついた同世代の女性の姿を、優しく軽やかに表現してみせた。

 本作は、伊吹有喜(ゆき)の人気小説を映画化したものだ。妻の乙美(執行(しぎょう)佐智子)を亡くし生きる気力を失っていた熱田良平(石橋蓮司)のもとへ娘の百合子(永作博美)が出戻ってきた。夫の浩之(原田泰造)が愛人をつくり、あろうことか子供までもうけてしまったことで、百合子は離婚を決意していた。そんなある日、「乙美から家族の面倒を見てほしいと頼まれていた」と、2人の前に謎の少女(二階堂ふみ)が現れ、乙美が残した家事全般のレシピの存在を伝える。

 永作は主人公・高岩百合子の人間像をどう構築すべきか、リアリティーを求め、苦しみながら思案を重ねた。「今、神様に感謝するばかりです」と恐縮しながら語るように、2人の子供を授かったばかりの現在の永作にとっては、百合子は極めて距離をつめにくい役柄なのだ。

 「世の中には何としても『子供を産む』という願いをかなえたい女性もいるでしょう。もちろん私にもその気持ちは分かります。でもそこに執着し過ぎてしまうと、視野が狭くなってしまう。時間もどんどんと過ぎていく。でも、人間が自分にないものを欲しくなるのは当たり前のこと」。今でも明確な答えを出せたとは思えない。ただ、永作は、監督のアドバイスの通り、まずは肩の力を抜いて撮影に臨むことにした。

 働く母の背中見せたい

 誰かに愛されていることを確信できれば、人はときに思いがけないほど強くなれるものだと、本作は気付かせてくれるだろう。物語の終盤、自分なりに悩み苦しんでいた浩之が百合子に意外な提案を持ちかけ、2人が再びなんらかの結論へ向けて進み始めることを暗示させる場面からは、百合子の心に芽生えた余裕がみて取れる。「別居する原因の一つには、自分が心を閉ざし、だんなさんを窮屈にさせてしまったことにあると、百合子は察することができたと思うんですよ。仮に私が同じシチュエーションにいたならば、もう一回やり直してもいいかな」。永作は百合子の心の成長をこう見てとった。

 料理が得意という永作は自分の母親からレシピを“皆伝”されたのだろうか。「母から何かを教わったという記憶はありません。幼い頃から台所に立つ母親の姿を見て『私もやってみたいな』と興味があったので、台所に立つ機会は多かったです。今、気がつけば、私が作る料理の味は母の料理と同じ味になっていましたね。使う材料の量や具の選び方はいつの間にか覚えていました」。ちなみによく母親が大量に作ってくれたのは、煮物やけんちん汁だそうだ。

 まだ幼い子供たちに残したいレシピは何だろう。「私は私の人生を生き、働きながら子育てしている。だから、子供たちが大人になったとき、『お母さんは働きながら自分たちを立派に育てたんだ』と納得してくれるように、子供たちに恥ずかしくない背中を見せていこう。漠然とですが、そんな気持ちはありますね」。11月9日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:伴龍二/SANKEI EXPRESS

 ■ながさく・ひろみ 1970年10月14日、茨城県行方(なめがた)市生まれ。テレビドラマ、舞台、映画と幅広く活躍。主な映画出演作は、2007年「人のセックスを笑うな」「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」、11年「八日目の蝉」など。「八日目の蝉」では日本アカデミー賞最優秀助演女優賞など各賞を総ナメにした。

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